釜戸かまど)” の例文
過ぎて新街道大釜戸おほかまどといふより御嶽みたけへ出づ元は大井より大久手おほくて細久手ほそくてを經て御嶽みたけいでしなれど高からねど山阪多きゆゑ釜戸かまどかた
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
下女に代って風呂場の掃除をしたり、釜戸かまどの火をいたり、下男といっしょに薪を作ったりすることは、母でさえながいこと知らずにいた。
日本婦道記:墨丸 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
これが着いた先は、周防すおう釜戸かまどノ関(現・上ノ関)で、尊氏はここから安芸あきの厳島神社へ代参の使い舟を派し
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三つの石は即席の釜戸かまどだったのである。りつ子はほおの木の葉も洗って持って来て、その上へもろこし餅をのせて彼に渡した。
おごそかな渇き (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
彼は濡れたおけを持っていたが、それを釜戸かまどの脇へ置いて、二人のほうへ近より、強い山訛りで、きめつけるように訊いた。
ごうごうと、大きな釜戸かまどうめきのような火の音と、えたける烈風のなかに、苦痛を訴えるすさまじい人の声が聞えた。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
暗くて広い土間へはいると、縁台が三つ並んでい、戸口の隅には釜戸かまどがあって、大きな湯釜から白く湯気がふいていた。その釜戸の前に老婆が一人。
そして、おいらだって同じなんだ、伝さんとこうしているときだけは誰に遠慮もなく、九尺二間の釜戸かまど将軍で手足を
恋の伝七郎 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
地面を掘り、石でたたんだ、ぶきような手製の釜戸かまどから、活き活きと火の舌が伸び、煙がゆるやかに、樹立のさし交わす枝葉の中へと、揺れながら昇ってゆく。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
こんどはその屋根を剥ぎはりをはずし壁を崩し、釜戸かまどをこわし柱の根を割り床板をめくりというぐあいに、日と時間におかまいなく一寸四方の余地もなく捜したうえ
女は釜戸かまどから、焚きおとしを十能じゅうのうに取り、小部屋の火桶ひおけに入れて、炭をついだ。おみやは包みの中から、なにがしかの金を出し、紙に包んで、女の前へさしだした。
背戸せどの方で娘たちのにぎやかな声が聞え、たそがれて来たこの縁先まで、釜戸かまどの煙がながれて来た。
似而非物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
髪毛から青い火をたてながら、焔の中へとびこんでゆく女の姿、……そして巨大な釜戸かまどえるような、すさまじい火の音をとおして、訴え嘆くようなあの声が聞えてきた。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そして今ではお義兄にいさまや与一郎さんの物をそうして縫っていらっしゃる、そればかりではないわ、お洗濯やお炊事にどれだけの水をお遣いになったでしょう、釜戸かまどや火桶で
日本婦道記:風鈴 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
盥は小さくはなかったが、片方が壁、片方に釜戸かまどがあるので、躯をながすには窮屈であった。彼は片膝かたひざを立て、手拭をぬるま湯に浸しては、そろそろと躯をしめした。するとおみやがのぞいた。
「おちつけ」と治兵衛が云った、「着替える暇はないかもしれない、そのままで釜戸かまどの蔭に隠れていろ、もし人が来たらおれが応対をするから、隙をみて隠居所へ知らせにゆくんだ、わかったか」
失蝶記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
母が釜戸かまどへ立っていた、弥之助はお八重の衿足えりあしにつよく眼をひかれた、二年のあいだにすっかり娘らしくなっている、そういう艱難かんなんな生活にいためられながら、若い命はいささかのためらいもなく
蜆谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
秀之進はそういって、土間の隅にある釜戸かまどのほうへと去った。
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)