金簪きんかん)” の例文
後の証拠にこの金簪きんかん、飛び上った拍子にちょっと抜き、肌身放さず持って居りやす。また逢うまでさらばさらば
善悪両面鼠小僧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
帰って母様にそう言って、このかたきを取ってもらいます。綱雄さんと私は奥村さんに見かえられました。私はもうこの間こしらえていただいた友禅もあの金簪きんかんも、帯も指環もなんにもいりませぬ。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
がたりとおとして一ゆりれヽば、するりおちかヽるうしろざしの金簪きんかんを、令孃ひめ纎手せんしゆけとめたま途端とたん夕風ゆふかぜさつと其袂そのたもときあぐれば、ひるがへる八つくちひらひらとれてものありけり
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
れば少し寒うございますなれども五月上旬はじめと云うので、南部のあい子持縞こもちじまあわせで着て、頭は達磨返だるまがえしと云う結び髪に、*ひらとの金簪きんかんを差し、斑紋ばらふの切れた鬢櫛びんぐしを横の方へ差し
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)