道標みちしるべ)” の例文
そうしてここに道標みちしるべがある。そうしてここは畑の中だ。それにお日様も傾いてあんなに西に沈んでいる。道標の影もうつっている。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
大枝おおえ越え丹波路”の道標みちしるべが見え、振返れば、さっき別れてきた大淀の流れも、にぶい銀の延べ板みたいに暮れ残っている。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と大きな道標みちしるべを横に睨まえ、もうこれ、ともかく五十七里も来たかなとつぶやきながら、善光寺の境内けいだいへはいって行く。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
人の心を新たにつくるために、イエスは教訓以上、模範以上のことを成されねばならなかったのです。イエスの生涯の道標みちしるべはもう十字架に向いていました。
そこでガックリとなった奴を蹴返けかやいて、縄の端を解いてそこいらに在った道標みちしるべ角石かくいしを結び付けた。
午後三時にムア・ハウスを出て、四時を少し過ぎたときには私はウ※トクロスの道標みちしるべの下に立つて、遠いソーンフィールドへ私を運んでくれる馬車の到着を待つてゐた。
印象主義の勝利は多難であったにしても、彼はこうして、近代音楽の上に、ベートーヴェン以来、最も大きなエポックを作り、次の時代への大きな道標みちしるべとなったのであった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
道標みちしるべ、それより何歩、どの方角にと、そういう風にくわしく記したのを、正副二枚だけこしらえ上げ、腹心の皆々立会の上、正の地図を石見守が取り、副の地図を人数だけに切放し
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
船を扱つてゐる人々ならば、勿論、いかに遠くとも、いかにぼんやりしてゐようとも、それは大陸の岬端であつて、世界の公道に立つ永遠の道標みちしるべであることはよく知つてゐる。
その後を尾行けて外伝も行ったが、辻や曲がり角や木立や門に、紙だのわらだのを蝶の形に、目立たぬように結びつけた。道標みちしるべの符牒なのである。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
先の男は、横道へはいると、かついでいたふくろのような物を、重そうに、道標みちしるべの下におろして、石の文字を読んでいた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たしかに小さいながら人間の形をしたものがこの道標みちしるべの下から飛び出して、俺の頭の上を走ったには走ったが、その姿を見ることはできなかった、しかしその足は温かい足で
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ところどころに石燈籠が道標みちしるべのように立っていて、それがそれのある四辺だけをぽっと明るくしているばかりであった。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
男が、もう丘の道を登っているので、後から、道標みちしるべの文字を読んでみると
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太く書かれた道標みちしるべの文字を読んで
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ここは萩原への峠道、一本の道標みちしるべが立っている。その前に立った一人の女! 他ならぬ蝮捕りのお仙である。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
所々にある道標みちしるべの石をたよりに、彼女は、中山越なかやまごえの峰にかかった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
というのは道標みちしるべで、それには不思議はなかったが、その道標の中所なかどころに、十文字の記号が石灰で、白く書かれてあるのであった。「婆さん」と次郎吉は話しかけた。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……それはそうと一体全体、ここは何んという所だろう? 道標みちしるべがあるよ、見てやろう。……西、萩原、北、大洞おおぼら。さあ困った、どっちへ行こう? 蝮占術うらない、今度こそ本芸
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
王朝時代の大泥棒、明神太郎から今日まで、二百人に及ぶ泥棒の系図、それから不思議な暗号文字やみことば——道標みちしるべ、畑の中、お日様は西だ。影がうつる。影がうつる。影がうつる。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その烈しい刃音掛け声を、道標みちしるべにしてこの時ようやく、冬次郎と勘助とが駈けつけて来た。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
道標みちしるべの前へ据えられた蝮、どっちへ行くかと思ったら、北、大洞の方へうごめき出した。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
道標みちしるべ、畑の中。お日様は西だ。影がうつる? 影がうつる? 影がうつる?」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さて川野辺へ来てみると、なるほどそこの道標みちしるべにも同じ十文字が記してあった。「こいつあいよいよ面白いぞ」そこで例の横歩き、風のように早い歩き方で、グングン東南へ走り下った。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)