追窮ついきゅう)” の例文
私は物足りない顔を二人に見せながら、物足りるまで追窮ついきゅうする勇気をもっていなかったのです。権利は無論もっていなかったのでしょう。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いや申します、申上げます」熊岡警官の追窮ついきゅうに隅田はとうとう声をあげた。「実は大変な間違いをやっちまったんです」
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
現代とても在来の経典をもって満足し、更に一歩を進めて真理の追窮ついきゅうに当ろうとする、気魄きはくのとぼしき者は多いであろう。それ等に対してわれ等は頓着とんじゃくせぬ。
もし道のない所を無闇むやみに進んで行こうものならそれがために村人の疑いを深くして追窮ついきゅうされるかも知れない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
夫人は、追窮ついきゅうするように、美しく笑いながらいた。信一郎は、可なりハッキリした口調で云った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「でも、狂人きちがいになるには何か仔細わけがあるでしょう。」と、冬子は目眦まなじりげて追窮ついきゅうした。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何だかへんだとは思いながら、お駒ちゃんも、ふかく追窮ついきゅうしようとはしなかった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
徳川末期趣味を髣髴ほうふつとさせているが、その趣味だけに停滞しないで、愛慾心理を追窮ついきゅうしているところに作者自身が意識するしないに関わらず、シリアスな感じが読者の心に伝わるのである。
武州公秘話:02 跋 (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
徳川末期趣味を髣髴ほうふつとさせているが、その趣味だけに停滞しないで、愛慾心理を追窮ついきゅうしているところに作者自身が意識するしないに関わらず、シリアスな感じが読者の心に伝わるのである。
追窮ついきゅうする。追窮されてもくるしまぬ源三は
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
追窮ついきゅうした。女は静かにいった。
五通 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
津田は追窮ついきゅうもしなかった。お延もそれ以上説明する面倒を取らなかった。二人はちょっと会話を途切とぎらした後でまた実際問題に立ち戻った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
モロの追窮ついきゅうがあまりにきびしかったので、ポーニンもようやくそれと、彼の素性すじょうに気がついたのであった。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
又真理の追窮ついきゅうは、かのブローテイナスをして、早くも地上生活中に、よく超現象の世界に遊ばしめ、更に真理の光明は、かのアレッサンドロ・アキリニイをして、よく烈々として
笑うたびに、津田はまた彼女を追窮ついきゅうした。しまいに彼女の名がつきだと判然わかった時、彼はこの珍らしい名をまだもてあそんだ。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、私は、博士のおもっていることを、もっとはっきりしたいと考え、追窮ついきゅうした。
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ただ口がきたくないからだといいました。お嬢さんはなぜ口が利きたくないのかと追窮ついきゅうしました。私はその時ふと重たいまぶたを上げてKの顔を見ました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
失礼だとあれば、私は追窮ついきゅうはいたしますまい。しかし万一、捜査課の警部たちがひきかえして来て、奥様にこの質問をいたしたものと仮定しますと、唯失礼だとばかりで追払うことは出来ますまい。
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)
オクテヴィヤは自分のようにせいが高いかの、髪の毛はどんな色だの、顔が丸いかの、声が低いかの、年はいくつだのと、どこまでも使者を追窮ついきゅうします。……
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私はこの追窮ついきゅうに苦しんだ。しかし先生は私に返事を考えさせる余裕さえ与えなかった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「とうとう降参しましたかな。降参したなら、降参したでよろしい。けたものを追窮ついきゅうはしないから。——そこへ行くと男にはまた弱いものをあわれむという美点があるんだからな、こう見えても」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)