べん)” の例文
「旧弊はとくに卒業して迷信婆々ばばあさ。何でも月に二三べん伝通院でんずういん辺の何とか云う坊主の所へ相談に行く様子だ」
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれども宗助そうすけくたびに、御米およねかなら挨拶あいさつるとはかぎらなかつた。三べんに一ぺんぐらゐかほせないで、はじめてのときやうに、ひつそりとなりのへやしのんでゐることもあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
考えると、丹前たんぜんの礼をこれで三べん云った。しかも、三返ながら、ただ難有うと云う三字である。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
土手の上に松は何十本となくあるが、そら首縊くびくくりだと来て見ると必ずこの松へぶら下がっている。年に二三べんはきっとぶら下がっている。どうしてもほかの松では死ぬ気にならん。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ことに所々に根を焼いた丸太が立っているから、ちょっと休息に便宜べんぎがある。今日は出来がよかったので朝から昼までに三べんやって見たが、やるたびにうまくなる。うまくなるたびに面白くなる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
拭くのが面倒だから壁へむいて二三べん手をふってそれから「カルルス」塩の調合にとりかかった。飲んだ。それからちょっと顔をしめして「シェヴィング・ブラッシ」をつかんで顔中むやみに塗廻す。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)