いな)” の例文
新字:
あながちにいなみもせず千代は私の杯を受取る。無地の大きなもので父にも私にも大の氣に入りの杯である。お兼はそれになみ/\といだ。
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
天皇初め天つ日繼知らしめさむとせし時に、いなびまして、詔りたまひしく「我は長き病しあれば、日繼をえ知らさじ」と詔りたまひき。
拂ひ外に茶代として二百疋を遣はしければ此たびは亭主もいなみ難く受納め酒肴など出して饗應もてなしけれども忠八はお花等が行方ゆくへ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
心たふとくやさしき人は他人の願ひ、言語または擧動によりて外部にあらはるればことせてその願ひをいなまず、直ちにこれを己が願ひとひとしうす
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
讀者よ、わが物語を聞くことをいなまざる讀者よ。願はくは一氣に此一段の文字を讀み去れ。われは唯だ省筆を用ゐて、その大概を敍して已みなんとす。
平次の持出した猪口ちよこ、ガラツ八はいなみもならず、冷で注いでキユーツとやります。
父はいなみてあくがれき。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
善くこそのたまひたれ。その戀愛とアヌンチヤタとを題とせん。われ。又の日にはいかなる題をもいなまざるべし。今宵のみはゆるし給へ。心地も常ならぬやうなり。
われわが識れるものゝ彼等の中にあるをみし後、心おくれて大事をいなめるものゝ魂を見知りぬ 五八—六〇
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
とのりたまひて、堅く讓りたまひき。かれえいなみたまはずて、袁祁の命、まづ天の下治らしめしき。
只管ひたすらたのみしに重四郎もいなみ難く承知せしかば此より畔倉を師匠ししやうとして主用のひまには劔道けんだうをぞまなびける是に因て重四郎も毎度穀屋こくやへ出入致しける處に主平兵衞は殊の外圍碁ゐご
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
われしこのあそびいなみなば、我生涯の運命はこゝに一變したるならん。後に思へば、此遊の四日は我少壯時代の六星霜を奪ひ去りたるなりき。誰か人間を自由なりと謂ふ。
ここに兄はいなびて、弟に貢らしめたまひ、弟はまた兄に貢らしめて、相讓りたまふあひだに既に許多あまたの日を經つ。かく相讓りたまふこと一度二度にあらざりければ、海人あまは既に往還ゆききに疲れて泣けり。