軽忽けいこつ)” の例文
旧字:輕忽
それ故、夢見の悪さにそれを事実でも有るかの如く、遠くから見舞に立つという事は、決して突飛でも軽忽けいこつでも無いので有った。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
で、誰もが、軽忽けいこつに口をひらくべきでないとして——じっと、沈黙をまもったまま、およそ大勢の定まるのを見ようとしているふうであった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
軽忽けいこつに狂喜した我がおろか慚愧ざんきする外はありませぬ——かし其の為に貴嬢の御名をも汚がすが如き結果になりましては、何分我心の不安に堪へませぬので
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
清太、玄瑞、杉蔵などもわれを学んで軽忽けいこつるな。吾は自ら知己の主、上にり、しからざるを得ず。三人暢夫と謀り十年ばかりも名望を養えと申し置き候。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
然れども軽忽けいこつに発狂したる罪はを鳴らして責めざるべからず。否、忍野氏の罪のみならんや。発狂禁止令を等閑とうかんに附せる歴代れきだい政府の失政をも天にかわって責めざるべからず。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
全裸で戦うのは、よほど腕力に自信のある人でなければ出来る芸当でない。漱石には、いささか武術の心得があったのだと断じても、あながち軽忽けいこつの罪に当る事がないようにも思われる。
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
むしろ化物いじりなどは軽忽けいこつとされたくらいである。
風流化物屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それをば軽忽けいこつにも黄河を打渡って、もし味方の不利とでもなろうものなら、それこそ生きて帰るものはないでしょう
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふ所の独逸ドイツとはすなわち何ぞや、彼等は軽忽けいこつにも独逸皇帝を指して独逸と云ふものの如し、気の毒なるかな独逸皇帝よ、汝は今夏こんかの総選挙に於て全力を挙げて戦闘せり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「三人とも我を学んで、軽忽けいこつをやるな、われは自ら知己の主、上にり、しからざるを得ず。三人(久坂実甫、久保清太、入江杉蔵)暢夫と謀り十年ばかりも名望を養えと申置き候」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
馬超は、呉蘭の軽忽けいこつな戦を大いに叱った。彼は、魏兵のあなどり難い強さを、骨身にみるほどよく知っていた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今にいたつて考へて見れば、我ながら余りの愚蒙ぐもう軽忽けいこつとにあきれるばかりです、私は初め山木君——貴嬢あなたの父上の御承諾を得ました時、既に貴嬢の御承諾を得たるが如く心得、歓喜の余り
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
と、部将のうちでは、自分たちの重々しさにくらべて、軽忽けいこつと評するものもあるけれど、また一部からは
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ご辺は平生もよく事を謹んで、いやしくも軽忽けいこつの士でないことを自分も知っておる。その故にいま馬謖の副将として特にえて差向ける。必ず街亭の要地を善守せよ」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
決して、軽忽けいこつらし難い大事なのだ。彼の眼は、おそろしく鈍いものみたいに気長だった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ信雄が余りにも軽忽けいこつに安うけあいして来たことが、おもしろくなかった。——というよりも、いまだに甘い考えから脱けない信雄にたいして、或る戒告かいこくと将来のために
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
息子の司馬師は父にいさめた。一片の紙片を信じて、これまで自重していた戦機を、我から動かすなどということは、日頃の父上らしくもない軽忽けいこつであると直言したのである。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
魯粛は、その日、例の船中で孔明に会ったので、周瑜の軽忽けいこつな処置を、嘆息して語った。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「十日の間は、かならず守備して、うかつに戦うなと命じておいたに、なぜ軽忽けいこつな動きをして、敵に乗ぜられたか。曹洪は若手だからぜひもないが、徐晃もおりながら、何たる不覚か」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『まだ、その以後の事は、一向に判明せぬが、やがて、次の早打も入ると思う。とまれ、事態はあきらかに、最悪を告げて居る。各〻方にも、軽忽けいこつなく、平常ふだんのお覚悟のほどを固められい』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
濡須じゅしゅの流域をさかいとして、魏の四十万、呉の六十万、ひとりも戦わざるなく、全面的な大激戦を現出したが、この、天候が呉に利さなかったといえ、呉は主将孫権の軽忽けいこつなうごきによって
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
空論の徒をわらったが、軽忽けいこつな実行家も嗤われて仕方がない。おれは後者のほうで、まず見事にしくじった。もっとも、しくじっても無意味ではなかった。実行は非常に早わかりがするからな。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
関羽は、彼の軽忽けいこつをたしなめ、一計を立てて、夜の更けるのを待った。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「行く先々、前夜のような狼藉者や、この際、何とか平家の恩賞にあずかろうと、慾にかかっている者も無数にある。軽忽けいこつなお旅は、危険極まるものでござる。すぐお引返し遊ばされますように」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、袁紹えんしょうは血刀を持ったまま彼の前へきて、その軽忽けいこつを責めた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、軽忽けいこつを戒め合って、すぐその由を関羽に告げた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(お父上は、どうしてそう軽忽けいこつでいらっしゃるか)
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)