路地口ろじぐち)” の例文
いよいよ御神燈ごしんとうのつづいた葭町の路地口ろじぐちへ来た時、長吉はもうこれ以上果敢はかないとか悲しいとか思う元気さえなくなって、だぼんやり
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
わたしは開いた口がふさがらなかった、するとマチアは片手かたてでくつしたをつかんで、片手かたてでわたしを路地口ろじぐちからった。
大和やまとの国、三輪みわの町の大鳥居の向って右の方の、日の光をきらって蔭をのみって歩いた一人の女が、それから一町ほど行って「薬屋」という看板をかけた大きな宿屋の路地口ろじぐち
路地口ろじぐちき出る菊の車かな
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
長吉は月のに連れられて来た路地口ろじぐちをば、これはまた一層の苦心、一層の懸念けねん、一層の疲労を以って、やっとの事で見出みいだし得たのである。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ある暗い路地口ろじぐちに立って、なにしろわずかの距離きょりしか見えなかったから、そっと口ぶえをふいた。
兼太郎は狭い路地口ろじぐちから一足ひとあし外へ踏み出すと、別にこれと見処もないこの通をばいつもながらいかにもあかるく広々した処のように感じるのであった。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さまざまな物売の声と共にそのへん欞子窓れんじまどからは早や稽古けいこ唄三味線うたしゃみせんが聞え、新道しんみち路地口ろじぐちからはなまめかしい女の朝湯に出て行く町家まちやつづきの横町よこちょう
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それに反して日陰の薄暗い路地はあたかも渡船の物哀ものあわれにして情味の深きに似ている。式亭三馬しきていさんば戯作げさく浮世床うきよどこ』の挿絵に歌川国直うたがわくになお路地口ろじぐちのさまを描いた図がある。
人家の軒下や路地口ろじぐちには話しながら涼んでいる人の浴衣ゆかたが薄暗い軒燈けんとうの光に際立きわだって白く見えながら、あたりは一体にひっそりして何処どこかで犬のえる声と赤児あかごのなく声が聞える。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
毘沙門びしゃもんほこらの前あたりまで来て、矢田は立止って、向側の路地口ろじぐちを眺め
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)