越方こしかた)” の例文
爰に決せしがるにても罪に陷りかばねを野原にさらさん事我が恥よりも先祖に對し面目なし嘸や跡にてお節をはじめ三五郎等がなげくで有んと越方こしかた行末ゆくすゑ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
徳川幕府の創業者の遺訓に曰く、「越方こしかた行末ゆくすえを思い新法を立て、家を新しくするなかれ、無調法ぶちょうほうなりとも、予が立置きたる家法を失い給うべからずと申すべし」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
かゝる時、人は往々無念無想のうちに入るものである。利害の念もなければ越方こしかた行末のおもひもなく、恩愛の情もなく憎悪の悩もなく、失望もなく希望もなく、たゞ空然として眼を開き耳を開いて居る。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
秋萩あきはぎ葉末はずゑに置ける露のごと、あだなれども、中に寫せる月影はまどかなる望とも見られぬべく、今の憂身うきみをつらしとかこてども、戀せぬ前の越方こしかたは何を樂みに暮らしけんと思へば、涙は此身の命なりけり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
あゝ今は越方こしかたとなりしつらき長きみちよわれたゞひとりなりしその日よ。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
かへつとく吉兵衞は宿やどりし山家やまがの樣子何かに付てうたがはしき事のみなればまくらには就けどもやらず越方こしかた行末ゆくすゑのことを案じながらも先刻せんこく主人あるじの言葉に奧の一間を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)