裸蝋燭はだかろうそく)” の例文
見る時、ほおおおへる髪のさきに、ゆら/\と波立なみだつたが、そよりともせぬ、裸蝋燭はだかろうそくあおい光を放つのを、左手ゆんでに取つてする/\と。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
火の気のなかるべきところに意外にも燈火あかりいています。それは真中の卓子テーブルの上へ裸蝋燭はだかろうそくを一本立てて置いてあるのであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
与力よりき、笹野新三郎の役宅へ飛込んでみると、女はまだ町奉行所には送らず、庭先にむしろを敷いて、裸蝋燭はだかろうそくの下で、身体を拭かれております。
左の手には裸蝋燭はだかろうそくをともし、右の手には鏡をって、お敏の前へ立ちはだかりながら、口の内に秘密の呪文じゅもんを念じて、鏡を相手につきつけつきつけ
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
寺の本堂ははなされて、如来様にょらいさまの前に供えられた裸蝋燭はだかろうそくの夜風にチラチラするのが遠くから見えた。やがて棺はかつき上げられて、読経どきょうが始まった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「さて、何かを祝おうではないか」で、四辺あたりへ眼を配った。裸蝋燭はだかろうそくが焔を上げて、卓袱台しっぽくだいの一所に立っていた。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それを、さびた燭台の裸蝋燭はだかろうそくのあかりで、ニヤニヤしながら眺めていた闇太郎、やがて、奥で——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
さあ御上がんなさいと裸蝋燭はだかろうそくを僕の顔に差しつけた娘の顔を見て僕はぶるぶるとふるえたがね。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
此のうち下女などが泥坊と聞いて裸蝋燭はだかろうそくなどを持ってまいりました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ところどころに青竹が立って、それに裸蝋燭はだかろうそくがさしてある。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と言って、七兵衛が先刻の裸蝋燭はだかろうそくへ火をつけた途端に、障子を開いたお絹が見ると、あたりはパッと金銭の小山。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その一間へ悠々とお賽銭箱をおろした七兵衛は、早くも用意の裸蝋燭はだかろうそくを燭台に立て、その下で一ぷく。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
卓子テーブルの上の裸蝋燭はだかろうそくを取って火を焚きつけて、また元のところへ立てて置きました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そうして裸蝋燭はだかろうそくは卓子の上から南条の手に取り上げられて
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)