藪蛇やぶへび)” の例文
神尾のやり方が穏かでないにきまっているから、騒いだ日には藪蛇やぶへびになるばかりか、自分たちもとばっちりをこうむるにきまっている。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その事情というのはその名画が、公表出来ないような筋道を通ってその人の手に入ったもので、届ければ藪蛇やぶへびになるのを嫌ったのである。
文覚の余計な奔走が藪蛇やぶへびとなり、この上重い咎なぞ受けてはかなわぬと思っていた。また文覚のいう政治力も半心半疑であった。
「このさい妄動もうどうは禁物だ。ヘタな藪蛇やぶへびは、逆に宋子そうし(宋江)の落命を早めてしまおう。この計略は入念に入念を要する」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「のこのこ出掛けて行って、玄関払いでも食わされて大きい騒ぎになったら、それこそ藪蛇やぶへびですからね。も少し、このまま、そっとして置きたいな。」
帰去来 (新字新仮名) / 太宰治(著)
他の場合とは違つて選挙ですから、実は僕なぞの出る幕では無いと思つたのです。万一、選挙人の感情を害するやうなことが有つては、かへつて藪蛇やぶへびだ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「アッ、そうだ! そうかもしれん。あいつがいることを思いつかなんだ。これはまったく、ことによったら事によるかもしれん。ウーム、とんだ藪蛇やぶへび!」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「僕はとにかく賛成しない。他の人を雇った方がいい。」と、藪蛇やぶへびにならないように簡単にいった。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「すると笛辰は夕方からブラリと出掛けたんです。よっぽど後をつけようと思いましたが、万一さとられると藪蛇やぶへびだと思って、とりあえず駕籠かごでここまで駆け付けました」
……独りで留守をしてゐると、此先このさきどうしたものかを心細く考へる。何か娘に向つて具体的な事を云ひ出さねばなるまいと思ひながら、藪蛇やぶへびを恐れて一日々々と延ばしてしまふ。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
時代おくれね。分らないこと生一本だという評判ですよ。それで松浦さんは話を持ち出すにしても、余程お天気の好い時を見計わないと、却って藪蛇やぶへびになると思っているらしいのよ
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「しかし、このままではおさまりますまい。かえって藪蛇やぶへびになるかも知れませんぜ。」
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そうだとすると、これは飛んだ藪蛇やぶへびだよ。相手は悪者だ。僕を身替りに立てて、どんな企らみをするか知れやしない。僕はそれを考えると何とも云えぬ変な気持がする。怖いのだよ
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
うっかり両替屋へ持って行ったら藪蛇やぶへびだ。巾着切りの方は現場げんばを見たわけでもねえから仕様がねえが、例の馬の一件、それが確かにお角の仕業だかどうだか、今のところじゃあ一向に手がかりがねえ。
半七捕物帳:58 菊人形の昔 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
迂濶うかつに外交的辞令など云って、藪蛇やぶへびなどにならなければよいが!
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
安直に大日本剣聖と向うを張らせておどかしたが、かえって枇杷島橋びわじまばしでの藪蛇やぶへび、あっぱれ道庵に武勇の名を成さしめてしまった。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「面倒くせえし、逃げられでもした日には藪蛇やぶへびだから、早く片を付けちまっちゃどうだ」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もういい。——お前は誰かを助けたいんだろう、余計な事をすると藪蛇やぶへびになるぜ」
と寛一君は新太郎君が藪蛇やぶへびになったのを見て取って早速気をかした。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
高音、藪蛇やぶへびだぜ、これあ。藪蛇はよしな
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
言えば藪蛇やぶへびだと思った。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「駄目、駄目、そんなことをするとかえって藪蛇やぶへびじゃ、見込まれたが望月の因果よ」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)