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蒋生
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しやうせい
最う
其の
門を
出はなれて、やがて
野路へ
掛る
處で、
横道から
出て
前へ
來て
通る
車の
上に、
蒋生日頃大好物の、
素敵と
云ふのが
乘つて
居た。
今は
早や、お
慈悲、お
慈悲の
聲も
嗄れて、
蒋生手放しに、わあと
泣出し、
涙雨の
如く
下ると
聞けば、
氣の
毒にも
又あはれに
成る。
其の
御樣子を
見せらるゝ、
蒋生は
命の
瀬戸際。
弱り
果て、
堪りかねて、「お
慈悲、お
慈悲、
歸ります、お
歸し
下さい。」と
矢たらに
叩頭をするのであつた。