葉裏はうら)” の例文
たもとくろく、こんもりとみどりつゝんで、はるかにほしのやうな遠灯とほあかりを、ちら/\と葉裏はうらすかす、一本ひともとえのき姿すがたを、まへなゝめところ
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
のんきなもので、敵が直ぐ頭の上に窺ツてゐるとも知らないで、ぴかり、ぴかり、からだを光らしながら、草の葉裏はうらで一生懸命に露をツてゐる。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
丁度葉裏はうらに隠れる虫が、鳥の眼をくらますために青くなると一般で、虫自身はたとい青くなろうとも赤くなろうとも、そんな事に頓着とんじゃくすべき所以いわれがない。
青い刻煙草きざみたばこの吸殻のような光があった。それは根笹ねざさ葉裏はうらに笹の葉の繊維をはっきり見せていた。
馬の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
どぶのさびた水が動いて行く提灯の光にかすかに見えた。おおいかぶさった木の葉裏はうらが明るく照らされたり消えたりした。路傍の草にも、畠にも、藪にも虫の音はたえず聞こえる。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
そよ風のたびに、加茂の宮の、青葉若葉の葉裏はうらが光る——
すぐに、くるりと腹を見せて、葉裏はうらくぐってひょいとじると、また一羽が、おなじように塀の上からトンと下りる。下りると、すっと枝にしなって、ぶら下るかと思うと、飜然ひらりと伝う。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)