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菊松
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きくまつ
「へい、
些と
爺には
似合ひましねえ、
村の
衆も
笑ふでがすが、
八才ぐれえな
小児だね、へい、
菊松つて
言ふでがすよ。」
「親分、土地の御用聞の
菊松が、今朝一人挙げて行ったそうですよ」
飛騨国の
作人菊松は、
其処に
仰ぎ
倒れて
今も
悪い
夢に
魘されて
居るやうな——
青年の
日向の
顔、
額に
膏汗の
湧く
悩ましげな
状を、
然も
気の
毒げに
瞻つた。
少いものを
唆かして、
徒労力を
折らせると
何故で
言ふのぢや。
御坊、
飛騨山の
菊松が、
烏帽子を
冠つて、
向顱巻を
為て
手伝つて、
見事に
仕上げさせたら
何とする。