荷駄にだ)” の例文
荷駄にだと荷駄とをつなぎ合わせて馬囲うまがこいを作り、人と人とは手をつなぎ、或いは槍の柄を握り合いなどして、一陣一陣濁流を渡るのだった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最初の時は、新植民地に要する生活要品を買いととのえる荷駄にだの宰領として頼まれて、明るく長浜へ下りて来ました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
向うから百姓が二人、荷駄にだを一頭ずついて来かかった。七十郎は歩みよって、どこの者だと訊き、自分の名をなのったうえ、そくばくの銀を渡して、その馬を借りるはなしをつけた。
岸には大八車にべか車、荷駄にだの馬、負子おいこなどが身動きもならぬ程に押合いへし合い、川の岸には山と積上げられた灘の酒、堺の酢、岸和田の新綿、米、ぬか藍玉あいだま灘目素麺なだめそうめん、阿波蝋燭、干鰯。
「いつ清洲から、いかなる軍令があるやもしれぬぞ。馬には飼い、物の具ととのえ、荷駄にだ兵糧の用意も変に応じて、ぬかりなきように」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昨夜、加州家の宰領の附いた荷駄にだが二頭、峠を越えて坂本の本陣まで着いたことはわかっているが、それから以後の行動が明らかでないということです。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
羅紗らしゃズボンだの、陣羽織だの、足軽笠あしがるがさだの、そして、荷駄にだや馬の首の流れて行く行列の上に、銃と槍と、旗差物はたさしものが、燦々きらきらしていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
牛車が十輛ばかり、荷駄にだが三十頭ほど、軍のいちばん後から続いて行ったが、牛と馬も、暴れたりれたりするので、遙かに、遅れていた。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
け廻り、荷駄にだの背に、金目な物や、武器や喰べ物など、積めるだけ積みこむと、一団になって、逃げ落ちてしまいました
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬も日に何升かの馬糧まぐさは食うが、これを田に使えば、人以上に耕し、これにになわせれば、汗して荷駄にだえきをつとめる。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宿しゅくの中を通っている街道には、ひとしきり荷駄にだの鈴や、宿引きの女の声や、さまざまな旅人の影が織っていた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家臣に、手配を命じ、乗り換え馬や、荷駄にだ、案内などの人数をさし向けて、来賓らいひんの備えをさせたが
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「先にお着きのお荷駄にだは、すべて積み終り、御船中のお囲幕かこいも、万端、ととのうておりますれば」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
荷駄にだ粮車ろうしゃすべての輜重隊しちょうたいは先へ進め。——戦闘部隊はずっと後につづいてゆくがいい」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「小左衛門。——岐阜ぎふを出る折にいいつけておいた木綿は、荷駄にだへつけて来たか」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
急に真夏を思わせてはかんかんと照りつけ、行儀のわるい荷駄にだ人夫が物売り店にたかって盛んに喰ったりわめいたりしているかと思えば、兵糧ひょうろうを載せた牛車をはさんで足軽同士の口喧嘩だ。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すこし平和と見ると、旅行者の数や、荷駄にだの交通は目立って多くなった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
使者の数正も、気に入られ、もう一日おれ、もう一日と、予定の滞在もつい延び延びになり、帰路には、おびただしい土産みやげ物を、主家へも、数正個人へも、荷駄にだが列になるほど、持たせて帰した。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大津は街道の要衝ようしょうであるが、ひとりの旅人も荷駄にだもない。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)