苦力クリー)” の例文
元来、苦力クリーに芸術はない。苦力には苦力の芸術がなければならぬといふことは、嘘である。芸術はそのあるべき場所にしか有り得ない。
「花」の確立 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
あるいは運送問屋、苦力クリー及車夫の取締、料理屋、女郎屋の親分などにより組織せられたもので、——行動の如きも極めて巧妙である。
督弁トバンでも、土豪劣紳でも、苦力クリーでも、乞食でも。一号、二号、三号……というのは阿片、ヘロイン、モルヒネなどの暗号だ。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
苦力クリーたちは寝静まった街の鋪道で眠っていた。かたまった彼らの肩の隙間では、襤褸ぼろだけが風になびいた植物のように動いていた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
北京停車場の一号プラット・ホームに南京発列車が到着すると、奇襲弾薬が破裂して数十名の死傷ができると時刻を同じくして碼頭まとう苦力クリーが暴動に参加した。
地図に出てくる男女 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
我儘わがままで成績があがらないとか——ビルマ雲南うんなんルートへ外国の技師と大変な苦力クリーが送られたとか——前線の中隊長や、大隊長でも知らないようなことばかりを聞いた。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
労務者は苦力クリーで、日本の民間人と言えばその関係と、満鉄関係者ぐらいなもんかな。とにかく検閲が終って、やれやれ、これであたたかい兵舎に入れると思ったら、これが大間違いです
狂い凧 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
あの無気味な地下室のある、香山飯店のおやじは、前から買収してあったらしい苦力クリーをつかって、祥子と一つのトランクを箱の中にしのばせ、首尾よく九竜丸の船艙に運びこんだのである。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
かれ等の中には、支那の苦力クリーに交つて労働してゐるものもあれば、杜の中に乞食でも住むやうなバラツクをつくつて、そこで日向ひなたぼつこなどをしてゐる光景を私達はよく路傍で見かけました。
一少女 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
米国への上陸が禁ぜられているシナの苦力クリーがここから上陸するのと、相当の荷役とで、船の内外は急に騒々そうぞうしくなった。事務長は忙しいと見えてその夜はついに葉子の部屋へやに顔を見せなかった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
山蛭やるびるに悩まされた記憶はいまだに忘れられませんが、それよりもなお一層忘れられない恐しいことがあったのです。それは一緒に連れて行った苦力クリーが逃げ遅れて、虎に喰い殺された時の光景です。
鉄の処女 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
北京官話と苦力クリーの用語とはちがうがあの本有益の由です。
春なれや苦力クリーととみて十尺とさか煙管きせる吸ひくゆらかに
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
苦力クリーと料理人の喧嘩5・25(夕)
彼は、もと、上海の碼頭はとば苦力クリーだったという話である。中津が、青島から帰りに、周村でつれてきて、呉れてよこした男だ。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
そういう露路に添ってそういう娼家が並んで居るのであり、そういう娼家の娼婦をひやかし乍ら、苦力クリーに近いような下等の労働者などが右往左往していた。
赤げっと 支那あちこち (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
群がる埠頭の苦力クリーが罷業し始めた。ホテルのボーイが逃げ始めた。警察内の支那人巡捕が脱出した。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
船腹に開いたドアからも、支那人の苦力クリーがしきりに荷物を運びこんでいた。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
春山はるやまと山をうづむる大群たいぐん苦力クリーさもあれや空は霞まず
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
塵埃ほこりの色をした苦力クリーが一台に一人ずつそれを押していた。たった一本しかない一輪車の車軸は、巨大な麻袋マアタイの重みを一身に引き受けて苦るしげに咽びうめいた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
河岸に積み上った車の腐った輪の中から、弁髪べんぱつ苦力クリーが現われると、お杉の傍へ寄って来て笑い出した。お杉は背を縮めて歩いていった。すると、男は彼女の後からついて来た。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
此処で申し上げて置きますが、この時の私の服装は、背広などという洒落しゃれたもので無く、苦力クリーの服装をしていたことで、そうして鳥打をまぶかに冠り、顔をかくすようにしていました。
四等車の苦力クリー
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
苦力クリー
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)