かり)” の例文
裁判官がかりにも一人の人間を死刑に処した後の気持は、貴方も十分に御承知でしょう。誰だって『あれが万一無実の罪であったらうしよう』
自責 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
新「うもトヽ飛んでもない事を仰しゃる、わたくしは何うもそんな、ほかの事と違い人を殺すなぞと、かりにも私は、どうも此方様こちらさまにはられません、ヘエ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
... かれ頃日このごろはわれなずみて、いと忠実まめやかかしずけば、そを無残に殺さんこと、情も知らぬ無神狗やまいぬなら知らず、かりにも義を知るわがともがらの、すに忍びぬ処ならずや」「まことに御身がいふ如く、 ...
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
おそろしや此大恩このだいおん良人をつとこゝろちてかりにも其色そのいろあらはれもせば。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
旨となしかりにもまがりし事はきらひ善は善惡は惡と一筋ひとすぢにいふ者なれば如何いかにせんみづきよければうをすまずのたとへもれず朋輩の讒言ざんげんに依り浪人なし此裏借家うらじやくやうつり住み近頃多病たびやうになりたれど心持のよき其日は此護國寺の門前へ賣卜ばいぼくに出わづかの錢を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かりにも武士の魂とも云う大切の物、手前達は何か武士が腰にたいして居る物は人斬庖丁ひときりぼうちょうなどゝ悪口あっこうをいうのは手前の様な者だろうが、人を無暗むやみに斬る刀でないわ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)