自来也じらいや)” の例文
自来也じらいや同心格子どうしんこうしなみに月は、いせいよく、店の上にぶらさがってふわふわ動いていました。清造はそんなたこを見たのは、はじめてでした。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
男はし、肌も白し、虫も殺さぬ顔をしているから、人殺しの兇状きょうじょうこそなけれ、自来也じらいやの再来とまでいわれた人間だった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
自来也じらいやも芝居や草双紙でおなじみの深いものである。わたしも「喜劇自来也」をかいた。自来也は我来也がらいやで、その話は宋の沈俶ちんしゅくの「諧史かいし」に載せてある。
自来也の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ちいさなちいさな小かにだのふぐだのをより出してくれる、しわ自来也じらいやの、年代のついたいさみの与三じい
犬山道節どうせつ、石川五右衛門、天竺てんじく徳兵衛、自来也じらいや以上の幻魔術が現代に行われ得る事になりはしまいか。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しゃ!明神様の託宣おつげ——と眼玉まなこだまにらんで見れば、どうやら近頃から逗留とうりゅうした渡りものの書生坊しょせっぽう、悪く優しげな顔色つらつきも、絵草子で見た自来也じらいやだぞ、盗賊の張本ござんなれ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そう云って両手を差上げたが、両肩から手首近くまで、自来也じらいや彫青ほりものがあるのが、濡れているせいであろうか、巻物をくわえた蝦蟇がまの眼玉がぎろぎろと動いて赤瀬を睨んだように見えた。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
かの田舎源氏いなかげんじ自来也じらいや物語、膝栗毛ひざくりげ八笑人はっしょうじん、義太夫本、浄瑠ママ本のごとき、婦女童子もこれを読んでよく感動し、あるいは笑い、あるいはかなしむもの、まことに言語・文章の相同あいおなじきゆえんなり。
平仮名の説 (新字新仮名) / 清水卯三郎(著)
自来也じらいやですね」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三枚つづき五枚つづき、似顔絵のうまい絵師のが絵草紙屋えぞうしやの店前にさがると、何町のどこでは自来也じらいやが出来たとか、どこでは和唐内わとうない紅流べにながしだとか、気の早い涼台すずみだいのはなしの種になった。
白く肌理きめこまかい金五郎の皮膚にくらべて、友田の身体は、鮫肌さめはだで、どす黒い。そこへ、両腕から背中一面にかけて、自来也じらいやの彫青をしているので、よごれたシャツでも着ているようである。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)