“膝行(ゐざ)” の例文
平次に迎へ入れられると、二つ三つ立て續けにお辭儀をして、後ずさりに膝行(ゐざ)りよるといつた、何んとなくたしなみの良い男でした。
淡海(たんかい)公の孫、大織冠(たいしよくくわん)の曾孫藤氏南家の族長太宰、帥豊成、其第一嬢子(だいいちぢやうし)なる姫である。屋敷から一歩はおろか、女部屋から膝行(ゐざ)り出ることすら、たまさかにもせない郎女(いらつめ)のことだ。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
はやく酒殽(さかな)をつらねてすすめまゐらすれば、八四万作酌(しやく)まゐれとぞ課(おほ)せらる。恐(かしこま)りて、美相(びさう)の若士(わかさぶらひ)膝行(ゐざ)りよりて八五瓶子(へいじ)を捧(ささ)ぐ。かなたこなたに杯(さかづき)をめぐらしていと興ありげなり。
医師は、横はつてゐる勝平の傍(そば)近く、膝行(ゐざ)り寄りながら、瑠璃子にさう訊いた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
のろのろと膝行(ゐざ)りゆく。
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
平次は娘の眼差(まなざし)に誘はれるやうに、默つて枕近く膝行(ゐざ)り寄りました。顏半分包んではありますが、この娘の美しさはまさに拔群です。
郎女の手に、此巻が渡つた時、姫は端近く膝行(ゐざ)り出て、元興寺の方を礼拝した。其後で
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
女出(い)で来りて、御訪(とぶら)ひのよし申しつるに、入らせ給へ、一三二物隔ててかたりまゐらせんと、端(はし)の方へ膝行(ゐざ)り出で給ふ。彼所(かしこ)に入らせ給へとて、一三三前栽(せんざい)をめぐりて奥の方へともなひ行く。
平次はそんな事は氣にも留めない樣子で、膝行(ゐざ)り寄ると死體に掛けた晒(さらし)木綿を除(と)り、丁寧に拜んで、暫らくその顏を見詰めて居ります。
伜の又次郎が手を出しさうにするのを止めて、自分で膝行(ゐざ)り寄つて、壁際に立てかけてあつた吹矢筒を取つて、平次に渡します。
平次はいつものやうに一禮してから、死體の側に膝行(ゐざ)り寄りました。顏を隱した晒(さらし)の布を取つて、ハツと息を呑んだのも無理はありません。
平次は部屋の四方から、家の構造をひと通り見て、地理的な關係を胸に疊んでから、膝行(ゐざ)るやうに中に入つて、慘憺たる死骸を、恐しく丁寧に見ました。
型の如き屏風(びやうぶ)の中に、北枕で若旦那の死骸が横たへてありますが、線香をあげて膝行(ゐざ)り寄つた平次は、たつた一目で、井戸の中で、三間以上の高さから
膝行(ゐざ)り寄つて線香をあげて、死骸を覆(おほ)つた巾(きれ)を取りのけて、物馴れたガラツ八も思はず聲を立てました。
お篠はさう言つて、自分の兩手を後ろに廻し、平次の方へ膝行(ゐざ)り寄るのです。白粉氣の無い顏は青ざめ、瞼(まぶた)に溢(あふ)れる涙が、豊かな頬を濡らして襟に落ちるのでした。
八五郎は咄嗟(とつさ)の間に二人の若い女を觀察すると、死骸の側に膝行(ゐざ)り寄つて、何時も親分の平次がするやうに、丁寧に拜んでから、顏を蔽(おほ)うてある白い布を取りました。
奧の間に寢かしたまゝ、検屍を待つてゐる娘お吉の死體を、平次は膝行(ゐざ)り寄つて一目見せて貰ひました。醜(みにく)かるべき絞殺死體ですが、これはまた何んといふ美しさでせう。
庭から直ぐ入つて、平次は死骸の枕許に膝行(ゐざ)り寄りました。至つて粗末な布團の上に着換へさせたとは名ばかりの古袷(ふるあはせ)、手習机の上に線香と水だけ供へてあるのも哀れです。
見ると主人は向うを向いたまゝうと/\して居たかも知れない——騷ぎの最中で、閉め忘れた縁側から膝行(ゐざ)り込んだ米松は、側にある血染の脇差を見ると、フト魔がさした。
ノソリと歸つて來た八五郎は、火鉢の側へ膝行(ゐざ)り寄ると、もうこんなことを言ふのです。
二三度店へやつて來て、顏馴染になつて居る八五郎は、その枕許に膝行(ゐざ)り寄りました。
膝行(ゐざ)り寄つたお京は、赤ん坊のやうな素直な心持で、音次郎の首つ玉に、犇々(ひし/\)とすがりつくのです。どつと留めどのない涙が、死に化粧の白粉を流して、男の襟へ首筋へと注(そゝ)ぎます。
などといひながら、欄干(らんかん)の方へよち/\膝行(ゐざ)つて、品(しな)を作つて柱に絡(から)むとそのまゝ『美人欄に寄るの圖』にならうといつた——少なくとも本人はさう信じて疑はない性(たち)の女だつたのです。
平次はそれに取合はずに、床の傍に膝行(ゐざ)り寄つて、問題の死骸を見ました。
八五郎はそれでも犬にも噛み付かれず、障子の外から膝行(ゐざ)り込みました。
三十郎は平次の顏を見ると、急に正氣づいたやうに膝行(ゐざ)り寄るのでした。
銭形平次捕物控:315 毒矢 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
そして膝行(ゐざ)り寄るやうに顏だけ隱したお才の死骸を調べるのです。
平次は主人榮之助の裾の方から、床へ近く膝行(ゐざ)り寄りました。
膝行(ゐざ)り寄つて一と眼、平次もさすがに顏を反けたほどです。
笹野新三郎は自分も膝行(ゐざ)り寄つて、平次を小手招ぎました。
膝行(ゐざ)り寄る喜兵衞は、松五郎の手に彈き飛ばされました。
平次は少し膝行(ゐざ)つて、行燈(あんどん)の前に左手を出すのです。
平次は膝行(ゐざ)り寄つて、澁紙と麻繩と蓋を見ました。