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らうふじん
頸筋は
豚に
似て
聲までが
其らしい
老人は
辨當をむしやつき、
少し
上方辯を
混ぜた五十
幾歳位の
老婦人はすしを
頬張りはじめた。
『まア
貴下あれが
見えないの。アゝ
最早見えなくなつた。』と
老婦人は
殘念さうに
舌打をした。
義母は
一寸と
其方を
見たばかり
此時自分は
思つた
義母よりか
老婦人の
方が
幸福だと。
大磯近くなつて
漸と
諸君の
晝飯が
了り、
自分は二
個の
空箱の
一には
笹葉が
殘り一には
煮肴の
汁の
痕だけが
殘つて
居る
奴をかたづけて
腰掛の
下に
押込み、
老婦人は三
個の
空箱を
丁寧に
重ねて