)” の例文
十二年前、喜望峰きぼうほうの波止場で、朝霧の立ち込めた穏やかな海上を大きな水禽が群れをなして水とすれすれにんでいた光景を思い出す。
暴風雨に終わった一日 (新字新仮名) / 松本泰(著)
この間ソ同盟の飛行機が北極を通過して一気に一万六百キロんでカリフォルニアのサンジャシント飛行場へ着陸し、六十二時間九分で
文芸時評 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
目近かく仰ぎ上げる頂上をかすめて、白い雲が飛んでは碧空に吸われるように消える。岩燕が鏑矢のような音たててう。
案内人風景 (新字新仮名) / 百瀬慎太郎黒部溯郎(著)
鴎は、まるでどこまでも離れない決心をしたもののように、そのヨットと方向と速度を一つにして、朝空を動くかなりの風の中をびつづけた。
朝のヨット (新字新仮名) / 山川方夫(著)
ときどき小鳥が、そんな私達の頭とすれすれのところを、かすかな羽音をさせながら、よろめくようにんでぎった。
晩夏 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
小旗は風にハタハタ揺れていた。また、来た。屋根には四、五羽いたが、そこから空をんでゆくのだ。流れてゆく川を渡って、また、屋根に舞戻った。
老人と鳩 (新字新仮名) / 小山清(著)
わたしの主人あるじカテリーナは今、眠つてゐます。あたしそれをしほに、そつと抜け出してんで来たのです。あたし永いことお母さんに会ひたいと思つてゐましたの。
黄泥色の濁りに底うなりを立てて蠢動しゅんどうして行った。ときどき野鴨のがもの群れが羽ばたいてび立った。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
……私は田螺から人生哲学を、蟹から無傷害主義を、そして蜻蛉の子からは進化趨異すういの理法を学んで来ました。そして、わたしは自由に空中をび得る薬まで貰って飲んで来ました。……
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
なまよみの 甲斐の国 打ち寄する 駿河の国と こちごちの 国のみ中ゆ 出で立てる 不尽の高嶺は 天雲あまぐもも い行き憚り 飛ぶ鳥も びものぼらず 燃ゆる火を 雪もて消ち 降る雪を
二、三の山名について (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
火雲むらがりべば、 そのまなこはばみてうつろ。
文語詩稿 一百篇 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
だがあゝ神様! 私の精神はんでゆきます
びゆく雲の落とす影のやうに
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
そして、飛行機は、見物に見えないところからプロペラの響をきかせて、社会主義の社会へとび去ってしまうのだった。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
かもめは、どこまでもその少女とヨットを追い、びつづけた。薄らぎかかる記憶の中で、鴎は少女に自分がただ、自分だけの充実を追った幼い恋人だったことを告げたかった。
朝のヨット (新字新仮名) / 山川方夫(著)
昼間、太陽が野天に輝やいて、遠くの森が常緑の梢で彼を誘惑する時、雄鳩は白い矢のように勇ましく其方へんだ。
白い翼 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
その幕の左右からうち合わせになっている中央のところに、翼をはって空と水との間をんでいるかもめが落付いた色調の組紐刺繍ししゅうで装飾されているのだった。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
空をびたいと熱望した少年イカルスが、大鳥の翼を体につけて地上より飛び立ち、高く高くと舞い上って行ったけれども、あんまり天に近いところまで行ったら
パリとロンドンとの間をんだけれど。普通に酔うのではなくて、脳の貧血がおこります。
やはり駅の周囲ですね。パンとトマトを買って横丁へ曲って来たら、さっき一ママうちをしていたのか別なのか相当にスピードの出ている速さで前後して追うような勢で西方へんでゆく。
これは地味な手紙だけれども、丁度この頃の土のように底に暖みを感じているよろこびの手紙なのです。ぶような歓び、又こうやって地べたを眺めるようなよろこび。いろいろね。丁重な挨拶をもって
オートバイではないようです、べるものかしら。
徐々に徐々にび去って行ったのを感じました。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)