ぶち)” の例文
今は失くした日本橋の旧居で使っていた道具のなかからわずかに残しておいたこの手のこんだ彫刻ぶちの姿見で化粧をするのは、小初には寂しい。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
朝から驟雨性しゅううせいの雨がざあと降って来たり、ほそい雨が煙ったり、蛞蝓なめくじが縁に上り、井戸ぶちに黄なきのこえて、畳の上に居ても腹の底までみ通りそうな湿しめっぽい日。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
お刀はたしかに己が脊負ってお屋敷から出たに違いないが、河岸ぶちへ来て、己が正体なくなって土地じびたへ坐った時に、常がこう/\と云った事はかすかに覚えてるが
丸顔で色の真黒まっくろな、目のきょろりとしたのが、一人はベエスボオルの小手をめた手を振るし、就中なかんずく一人ロイドぶちの大目金を掛けたのが、チュウインガムをニチャニチャとみながら
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「大丸木ぶち」「小丸木縁」(縁附丸笊ふちつきまるざる)「かこべ」(桑籠くわかご)「荒とす」(「とす」は「通す」の意でふるい)、「おぼけ」(緒桶おおけの意か)等色々に呼ぶ。その他最も多く作るのは行李こうりである。
陸中雑記 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)