まぐ)” の例文
「さやうで御座います。来月あたりに成りませんと、余り咲きませんので、これがたつた一つ有りましたんで、まぐざきなので御座いますね」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「棄てられたりまぐれたりして来たから拾って育ててやるので、犬や猫を飼うのはたのしみよりはくるしみである。わざわざ求めて飼うもんじゃ決してない、」
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
だが、時間がたつに従って、一座は、今日の爆撃がたまたま地隙ちげきを縫って、深い地下に達したというようなまぐれあたりのものでないことに気がついたのだった。
美濃の斎藤道三さいとうどうさんどのと、むこしゅうとの初対面をなされた時の信長公の仕方は、なかなか平常のうつけとは違っていたとか。——はははは。あれはうつけのまぐあたりというもの。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本当に是でい事だと思って、其言葉の尾にすがって、何処かの雑誌へ周旋をと頼んだ。こんなのを盲目めくらまぐあたりと謂うのだろう。機を制せられて、先生も仕方がなさそうに是も受込む。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「いや、成功は運だよ。まぐれ当りだ。しかし奮闘丈けは遺憾なくしている」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「親分、そんな情ねえ事を言つて貰ひたくねえ。あれはまぐれ當りだ」
あとで聞けば、硫黄でえぶし立てられた獣物けものの、恐る恐る穴の口元へ首を出した処をば、清五郎が待構えて一打ちに打下うちおろす鳶口、それがまぐれ当りに運好くも、狐の眉間へと、ぐっさり突刺って、奴さん
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
この猫もとは皆川町時代に何処からかまぐれ込んで来た迷い猫であって、毛並から面付つらつきまでが余りくなかった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)