)” の例文
数十間の楼台ろうだいを築き、さらに巍々ぎぎたる層々の五重が設計されてあり、総塗そうぬめ、大矢狭間おおやざまを開き、頂上の瓦は、悉く消金けしきんをもってるとある。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なる程生というものは苦艱くげんを離れない。しかしそれを避けて逃げるのは卑怯ひきょうだ。苦艱めに生を領略する工夫があるというのだ。Whatホワット の問題を howハウ にしたのだね。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
雪に閉じめられて働けない冬もりの期間は、馬鈴薯と南瓜ばかり食っているために、春になると最早もはや、顔が果物のように黄色を帯びて来て、人間の肌色を失っているのだった。
熊の出る開墾地 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
おれは昨夜もおなじ上掩うわおおいを着て、鹿撃ち弾を二重めにした鉄砲を持って、夜のあけるまで見張っていたのだが、朝になって見ると新しい足跡が前の通りに残っているではないか。
ことむずかしくいえば、土牢どろう塗籠とろうで、すなわち“め”——壁ばかりな部屋ということの訛伝かでんであろうか。
廉子はじめ後宮の女人にょにんたちもすべて、諸家の“あずめ”となって分散されていたのである。また新朝廷の、久我こがノ右大臣へも事のよしを報じてもどった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)