ふだ)” の例文
喬生はその坐下に拝して、かの牡丹燈の一条を訴えると、法師は二枚のあかいおふだをくれて、その一枚はかどに貼れ、他の一枚は寝台に貼れ。
なお間違いのないように、ふだを渡しておこう……と云って自分の名刺を半分にいて、一つを支配人に渡し、残りの一つを自分のポケットに入れたそうです
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
姑丈おじが没くなった後でも、狐が時おり来ていたが、後に張天師のかじふだをもらって、壁にったので、狐もとうとう女の子を伴れていったのだか、それじゃないかね。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
四月の二十日はつかに奥州へ行くと云って暇乞いとまごいにまいりました人に、旦那様が塩釜様しおがまさまのおふだをお頼みなさったので、わたくしは初めて御新造様が懐妊みもちにおなりなさったのを知ったのでございます
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
東寺とうじ卿公きょうのきみと云う修験者しゅげんじゃにおふだをもらって来てると、怪しい物も来ないようになったので、五十日ばかりして東寺に往って卿公に礼を云って酒を飲み、その帰りに女のことを思いだして
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
老女はあると答えると、それではおれがはらってやろうといって、道士はふくろのなかから一枚のおふだを取り出して火にくと、やがてどこかで落雷でもしたような響きがきこえた。
道人は頷いてふだを二枚出した。
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その忙がしいひまをぬすんで、ある者は京の土産を買い調えるのもあった。ある者は知るべのところへ暇乞いとまごいに廻るのもあった。神社や仏閣に参拝して守りふだなどを貰って来るのもあった。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
道人はうなずいてふだを二枚出した。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)