竹馬ちくば)” の例文
世に竹馬ちくばまじわりをよろこべるものは多かるべしといへども、子とわれとの如く終生よく無頼の行動を共にしたるものは稀なるべし。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
はしなくも幼友達の名をわが思い出の一齣ひとこまのうちにしるしとどめる折りにった。御輿を担ぐ面々はみな私の竹馬ちくばの友である。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
これわたし竹馬ちくばとも久我くがぼう石橋いしばしとはおちやみづ師範学校しはんがくかう同窓どうそうであつたためわたし紹介せうかいしたのでしたが、の理由は第一わたしこのみおなじうするし
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そこで僕自身のことを鳥渡ちょっとお話して置かねばならないが、僕は元来、柿丘と郷里の中学を一緒にとおりすぎてきた、いわゆる竹馬ちくばともというやつで
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は一族の長老円喜の孫で、少年の日から小姓として仕え、高時とは主従の半面、いわば竹馬ちくばの友でもあった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
江戸の旗本の家に、かんむり若太郎という十七歳の少年がいた。さくらの花びらのように美しい少年であった。竹馬ちくばの友に由良ゆら小次郎という、十八歳の少年武士があった。
懶惰の歌留多 (新字新仮名) / 太宰治(著)
堺では私の竹馬ちくばの友である伊藤市郎氏、この方もよく慰みに網打に行かれたですが高部氏の話をしていさめたところが幸いに私のこいを容れ網を焼いて餞別にしてくれた。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
竹馬ちくばの友だから遠慮がない。僕も同郷の後輩ということになるから、罷り出て御高説を拝聴する。これが唯一の息抜きだ。この時は話をしても嚔をしても叱られない。
変人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お身とおれは竹馬ちくばの友だ。源三郎とても同様で、互いに意趣も遺恨もあっての果し合いでない。いわば当座の行きがかりで、討つ者も討たるる者も詰まりは不時の災難だ。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これは豊吉の竹馬ちくばの友である。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
人間的な心情では、竹馬ちくばの友だが、公人的には、重さもちがう、官位もちがう、声望もちがう。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は通学の際にはたいてい近所に住んでいるはじめさんという子と誘い合わせて行った。ときには、はじめさんの妹ののぶちゃんと行くこともあった。二人とも私の竹馬ちくばの友である。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
井上唖々いのうえああさんという竹馬ちくばの友と二人、梅にはまだすこし早いが、と言いながら向島を歩み、百花園ひゃっかえんに一休みした後、言問ことといまで戻って来ると、川づら一帯早くも立ちまよう夕靄ゆうもやの中から
雪の日 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
東金君とうがねくんと僕は何の因果だろう? 小学校から一緒で竹馬ちくばともだ。現在も友情を誓っている。喧嘩一つしたことのない仲だけれど、昨今はお互に好かれと祈らない。始終競争意識にとらわれている。
村一番早慶戦 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)