竹杖たけづえ)” の例文
尻切しりきれ草履突かけて竹杖たけづえにすがって行く婆さんのうしろから、くわをかついだ四十男の久さんが、婆さんの白髪を引張ったりイタズラをして甘えた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
が、ともかくもまずおれと一しょに、峨眉山の奥へ来て見るがい。おお、さいわい、ここに竹杖たけづえが一本落ちている。では早速これへ乗って、一飛びに空を渡るとしよう
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
馬士まご轡頭くつわをしっかと取って、(やあ、黒よ、観音様念じるだ。しっかりよ。)と云うのを聞いて、雲をかいかとあやぶ竹杖たけづえを宙に取って、真俯伏まうつぶしになって
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
僧は菅笠すげがさ竹杖たけづえをついていた。緑樹の色がうっすらとその白衣びゃくいを染めて見せた。
岩魚の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そうですわたしも竹杖たけづえ仕込みの刀を、ひっこ抜いて構えたのです。
怪しの者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わし真先まっさき出会でっくわした時はかさかぶって竹杖たけづえを突いたまま、はッと息を引いてひざを折ってすわったて。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
奇麗にならした畑は一条ひとすじ一条丁寧に尺竹しゃくだけをあて、縄ずりして、真直ぐに西から東へうねを立て、堆肥を置いて土をかけ、七蔵が種をれば、赤児を負った若いかみさんが竹杖たけづえついて
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)