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端艇
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たんてい
して
見ると、
我が
端艇は、
何時の
間にか
印度洋で
名高い
大潮流に
引込まれたのであらう。
私は
何となく
望のある
樣に
感じて
來たよ。
愕いて
頭を
上げると、
今しも
一個の
端艇が
前方十四五ヤードの
距離に
泛んで
居る、
之は
先刻多人數が
乘つた
爲に、
轉覆した
中の
一艘であらう。
弦月丸の
運命は
最早一
分、二
分、
甲板には
殘る
一艘の
端艇も
無い、
斯くなりては
今更何をか
思はん、せめては
殊勝なる
最後こそ
吾等の
望である。