私儀わたくしぎ)” の例文
私儀わたくしぎ今般貴家御離縁に相成あいなり、実父より養育料差出そうろうについては、今後とも互に不実不人情に相成ざるよう心掛たくとぞんじ候」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一 私儀わたくしぎ狂言作者志望につき福地先生門生もんせい相成あいなり貴座きざ楽屋へ出入被差許候上者でいりさしゆるされそうろううえは劇道の秘事楽屋一切の密事決而けっして口外致間敷いたすまじく依而よって後日ごじつのため一札如件いっさつくだんのごとし
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
如何どうでもましょうといって、ソレカラ私儀わたくしぎ大阪おもて緒方洪庵こうあんもとに砲術修業に罷越まかりこしたい云々うんぬんと願書を出して聞済ききずみになって、大阪に出ることになった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
相待ち懷姙くわいにんの子を大切たいせつに致すべしとて御手元おてもと金百兩をさわつかはされたり澤の井は押戴おしいたゞ有難ありがたきよしを御禮おんれい申上左樣なればおほせに隨がひ私儀わたくしぎは病氣のつもりにて母のもとへ參るべししかしながら御胤おんたね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私儀わたくしぎ柔弱にゅうじゃく多病につき、敵打の本懐も遂げ難きやに存ぜられ候間そうろうあいだ……」
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おれは早速辞表を書こうと思ったが、何と書いていいか分らないから、私儀わたくしぎ都合有之これあり辞職の上東京へ帰り申候もうしそろにつき左様御承知被下度候さようごしょうちくだされたくそろ以上とかいて校長あてにして郵便で出した。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)