石火矢いしびや)” の例文
さらには、意外な方角からも、石火矢いしびやうなりが火をいて樹林をふるわせ、そこらの巨木の上からも乱箭らんせんが降りそそいでくる始末だ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鉄砲みがき組支配田付四郎兵衛景利とともに大小火砲、石火矢いしびや棒火矢ぼうびや狼煙のろし揚物あげもの、その他、火術の一般を差配することになった。
ひどい煙 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そこで大船を求めしめた処が、丁度平戸沖に阿蘭陀オランダ船が碇泊しているのを知った。直ちに廻送せしめ、城へ石火矢いしびやを放たせた。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
同夜、こくごろより、石火矢いしびや数百ちょう打ち放し候ところ、異船よりも数十挺打ち放し候えども地方じかたへは届き申さず。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
犬をいた甲比丹カピタンや、日傘をさしかけた黒ん坊の子供と、忘却の眠に沈んでいても、新たに水平へ現れた、我々の黒船くろふね石火矢いしびやの音は、必ず古めかしい君等の夢を破る時があるに違いない。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
朝霧のあいだに双方の石火矢いしびやや銃火がかわされ出した。すると、思いもうけぬ方から霧を破って、またべつな一船隊が毛利方へ迫撃して来た。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるところ、長州様蒸気船二艘まいり、石火矢いしびや打ち掛け、逃げ行く異船を追いかけ二発の玉は当たり候由に御座候。その後、異船いずれへ逃げ行き候や行くえ相わかり申さず。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
が、ひとり石火矢いしびやの下に剛情にもひとり城を攻めてゐる。かう云ふピカソを去つてマテイスを見る時、何か気易さを感じるのは必しも僕一人ではあるまい。マテイスは海にヨツトを走らせてゐる。
義元は、早くも同朋の者がかしてさし出した茶を一喫いっきつしながら、何か、石火矢いしびやでも撃ったようなとどろきに、眼をうごかした。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるに、ここに泉州せんしゅうさかい住人じゅうにん一火流いっかりゅう石火矢いしびや又助流またすけりゅう砲術ほうじゅつをもって、畿内きないに有名な鐘巻一火かねまきいっかという火術家かじゅつか
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おそらく、黒田官兵衛が、奔走ほんそうして、買入れて来たものであろう。旧式な石火矢いしびや大筒おおづつを捨てて、陣前の井楼せいろうに、南蛮製なんばんせいの大砲を城へ向けてすえつけたのも、秀吉がいちばん早かった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ときしも、羽柴筑前守秀吉はしばちくぜんのかみひでよしは、北国ほっこく柴田権六しばたごんろくをうつ小手しらべに、南海なんかいゆう滝川一益たきがわかずます桑名くわなしろを、エイヤ、エイヤ、血けむり石火矢いしびやで、めぬいているまッさいちゅうなのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)