石地蔵いしじぞう)” の例文
旧字:石地藏
背向うしろむきの石地蔵いしじぞうが、看護婦の冠る様な白い帽子をせられ、両肩りょうかたには白い雪のエパウレットをかついで澄まして立ってござるのだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あるいは宮や寺の宝物ほうもつになっている古い仮面めんをかり、釣鐘つりがねをおろし、また路傍の石地蔵いしじぞうのもっとも霊験れいげんのあるというのを、なわでぐるぐる巻きにしたりして
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
または寺の多い裏町の角なぞに立っている小さなほこらやまたあまざらしのままなる石地蔵いしじぞうには今もって必ず願掛がんがけ絵馬えまや奉納の手拭てぬぐい、或時は線香なぞが上げてある。
経堂の駅で電車をおりて、教えられた道を十丁ほど行くと、街角に大きな石地蔵いしじぞうが立っていた。
悪霊物語 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
みちばたに何ほどかの閑地あきちが残されていて、そこが少し高みになった場所がある。苔蒸した石碑などが傾いたまま草むらに埋もれている。そういうところによく石地蔵いしじぞうが据えてある。
まことは——吹矢ふきやも、ばけものと名のついたので、幽霊の廂合ひあわいの幕からさかさまにぶら下り、見越入道みこしにゅうどうあつらへた穴からヌツと出る。雪女はこしらへの黒塀くろべいうっすり立ち、産女鳥うぶめどり石地蔵いしじぞうと並んで悄乎しょんぼりたたずむ。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「叔父さんは随分石地蔵いしじぞうね」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
左右ともに水田のつづいた彼方かなたには鉄道線路の高い土手が眼界をさえぎっていた。そして遥か東の方に小塚こづかぱらの大きな石地蔵いしじぞうの後向きになった背が望まれたのである。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
まったく、一山いっさんの仏たち、おおき石地蔵いしじぞうすごいように活きていらるる。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
石地蔵いしじぞう無手むず胡坐あぐらしてござります。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)