督促とくそく)” の例文
契約は暗黙のうちに結べばいい。それで、にんじんは、今後、督促とくそくたず、しかも、報酬を当てにしないで働かなければならぬ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「あたしたちももう隠居いんきょしたのだから、早くお前さんにお嫁さんを貰って、本当の楽をしたいものだね」世間並に結婚を督促とくそくした。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
意外にも半兵衛儀は、まだ御申おんもうけの事を、実行しておりません。使者たるそれがし落度とも相成る事、きびしく督促とくそくいたしおきました。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
という触書ふれがきが廻った。そして、その日から千坂家の者が各屋敷をめぐり、びしびしと督促とくそくしてすべての貯蔵米を城へ運びこんでしまった。
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこで父と衝突しようとつだ。父はもう期限きげんが來たからと謂ツてやかましく義務の實行を督促とくそくする、周三は其様な義務を擔はせられた覺は無いとかぶり振通ふりとほす。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
それでも同益社どうえきしやでは石橋いしばし身元みもとを知つてるから強い督促とくそくず、続いて出版を引受ひきうけてたのです、の雑誌は廿にぢう一年の五月廿にぢう五日の出版しゆつぱんで、月二回の発行で、これも九がうまで続いて
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
列国会議の成功しなかったのはただ決議または約束するだけで、これを督促とくそくし実行せんとするものがなかったからである。再度集まることは面倒であるから、結局決議のしばなしということになった。
田中は、まだかまだかと督促とくそくしてもどかしがった。
頭と足 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
監視やら帰宅の督促とくそくやらの意味を籠めて「うちのお風呂が沸きましたから、お嬢さまに、お話しが済み次第、直ぐお帰りになるように」
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
お易いことで——と云いたいが、お嬢様も知っての通り、又、甲斐の武田方からの督促とくそくで、御当家からも御軍勢が続々と出ているところだ。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一族の館のほか、時の勢いで、ここはそのまま政治を評議したり、庶民の訴訟を裁いたり、租税を督促とくそくしたり、市中の警備から、諸国諸道の法令を発するところにまで成ろうとしている。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『それではかえって、残務の処理がおくれて困るという大石殿の仰せだ。町名主に日限を示し、こちらから督促とくそくしても、藩札の方は、両三日中に一切きまりをつけるようにというお言葉だった』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家康からの頻々ひんぴんたる督促とくそくにたいし、真田さなだの方にも、ひとかどの云い分があった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、あわただしい死の督促とくそくが彼女の心臓をたたいたらしい。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、容易にらちがあかぬ故、督促とくそくに参ってもらうのじゃ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)