盗坊どろぼう)” の例文
今思えばれは茶屋でもトックにしって居ながら黙って通して、実はその盗品の勘定もはらいの内に這入はいって居るに相違ない、毎度の事でおきまりの盗坊どろぼうだから。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
せめ盗坊どろぼう所為しわざにでも見せ掛け何か品物を盗んで置くとか此室を取散とりちらして置くとかそれくらいの事はそうなもの
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「あゝ銭が欲しいなあ!」と、私は盗坊どろぼうというものは、斯ういう時分にするのかも知れぬ、と其様なことまで下らなく思いあぐんで、日を暮らしていた。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
そうして見ると、わたし盗坊どろぼうね。お前さんは目が覚めて見ると、わたしに何もかも取られてしまっているのだわ。それをわたしは取ってあの人に可哀がられるたねにしている。
犯罪者になって死刑の宣告を受けて見るがい。それか、おれのような体になって見るが好い。その上でなくては話しは出来ないのだ。盗坊どろぼうは平気な顔で絞首台へ連れて行かれる。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
根が三人兄弟のうちでは慾の一番深い二郎次でしたから、そんな大金を見ると、フラフラと悪い心が起りました。お金がこんなにもうかるのなら、盗坊どろぼうの仲間になってもいいと思いました。
三人兄弟 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
盗坊どろぼう根性がちょっぴりと、助平根性がちょっぴりと
悪人を探す為に善人を迄も疑い、見ぬ振をしてぬす、聞かぬ様をして偸みきく、人を見れば盗坊どろぼうと思えちょうおそろしき誡めを職業の虎の巻とし果は疑うにとまらで
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
もしあなたが盗坊どろぼうなら
是より夜の明るまで余は眠るにも眠られず、様々の想像を浮べ来りて是かれかと考え廻すに目科は追剥おいはぎ盗坊どろぼうたゞしは又強盗か、何しろ極々ごく/\の悪人には相違なし。
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
余は故と「では幽霊の真似をして私を驚かせた——」秀子「ハイ其の盗坊どろぼうは虎井夫人です、私は初めから疑って居ましたが、衣嚢の紛失を見て愈々爾だと思いました、 ...
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
盗坊どろぼうならば知らぬ事、老人を殺した奴が何一品盗まずに立去たと云う所を見れば盗坊で有りません愈々いよ/\藻西に限ります藻西の外に其様な事をする者の有う筈が有ません
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
其の幽霊が盗坊どろぼうです、溜息を吐いたり壁を撫でたりするのは貴方を
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)