白樺しらかんば)” の例文
白樺しらかんばの下葉は最早落ちていた。枯葉や草のそよぐ音——殊にかしわの葉の鳴る音を聞くと、風の寒い、日の熱い高原の上を旅することを思わせる。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
白樺しらかんばよ、蓬生よもぎふ大海原おほうなばらゆあみする女の身震みぶるひ、風がその薄色の髮に戲れると、おまへたちはなにか祕密を守らうとして象牙の戸のやうにあしを合せる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
蝦夷松えぞまつ椴松とどまつ白樺しらかんばの原生林を技けて、怪獣のごとくまた疾風しっぷうのごとく自動車で横断することは、少くともこの旅行中の一大壮挙にはちがいない。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
幼児をさなごしろ蜜蜂みつばち分封すだちのやうに路一杯みちいつぱいになつてゐる。何処どこからたのかわからない。ごくちひさな巡礼じゆんれいたちだ。胡桃くるみ白樺しらかんばつゑをついて十字架クルス背負しよつてゐるが、その十字架クルスいろ様々さまざまだ。
大谷地は深き谷にて白樺しらかんばの林しげく、その下はあしなど生じ湿しめりたる沢なり。この時谷の底より何者か高き声にて面白いぞーとばわる者あり。一同ことごとく色を失い遁げ走りたりといえり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
白樺しらかんばなぞの混った木立の中に、小屋へ通う細い坂道、岡の上の樹木、それから小屋の屋根なぞが見えた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ただ二隻のランチに一隻ずつ曳かれた私たちの大団平船だんべいぶねが、沿岸に蘆荻ろてきが繁って、遥かの川上に中部樺太の山脈が仰がれ、白樺しらかんば、ポプラ、椴松とどまつ蝦夷松えぞまつの林を左右に眺めて
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
名も知られずに悲しげな白樺しらかんば處女をとめで通す健氣けなげの木、わたしの悲しい心のよろこび
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
最早霜が来るらしい雑草の葉のあるいは黄に、あるいは焦茶色に成ったのを踏んで、ポツンポツンと立っている白樺しらかんばの幹に朝日のあたるさまなぞをながめながら、私達は板橋村という方へ進んで行った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
河口を少しくのぼった空地くうちには木羽葺こっぱぶきの休憩所が一つ見えていた。まだ接待の準備もつかないらしく、若い酌婦風の女が一人二人、風に吹かれて、対岸の遠いポプラや白樺しらかんばのかがやきを見入っていた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
よく光る白樺しらかんばの枝枝にある。
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
よう枯れし白樺しらかんばなる。
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)