疱瘡はうさう)” の例文
これ吉瑞きちずゐなりけん、此年此家のよめ初産うひざん男子なんしをまうけ、やまひもなくておひたち、三ツのとし疱瘡はうさうもかろくして今年七ツになりぬ。
「チックヮラケー。」とうたひました。けれどもその声がいかにも力がなくて、例の疱瘡はうさうの神もげ出すほどの勢がありません。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
主人のおきなはそこで又こんな事を思ふ。人間の大厄難になつてゐるやまひは、科学の力で予防もし治療もすることが出来る様になつて来た。種痘で疱瘡はうさうを防ぐ。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
扨も杉戸屋富右衞門に一人のせがれあり幼少のせつ疱瘡はうさうにて兩眼をうしなひしかば兩親も大に心を痛め種々治療ちれうに手をつくせ共更に其しるしも無く依て田舍座頭ゐなかざとうにせんも不便なりと種々に心配を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
最初は見馴みなれた私も、妹のあやめさんと間違へたほどですから、玉子を剥いたやうなあやめさんと、疱瘡はうさう菊石あばたになつたお百合さんとは同じ姉妹でも大變な違ひやうで、仰向になつてゐれば
ただ、いたちが疱瘡はうさうで寝てゐた。
第二海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
重い疱瘡はうさうにかゝつていらつしやるのを知らないか? あの菊石面あばたづらの赤い疱瘡神は、王様のお体に、その一万もある針を、すつかりさしこんで、毒を入れてゐる。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
無殘な姿になつてゐるのは、少し足が惡い上、ひどい疱瘡はうさうで見る影もないきりやうになつた姉娘のお百合、二十四になるまで兩親の側に居て、藝事に精を出してゐる、日蔭の花のやうな娘でした。
是より先には亀千代は寛文二年九月に疱瘡はうさうをしたより外、無事でゐた。そばには懐守だきもりと云つて、数人の侍が勤めてゐたが、十歳に足らぬ小児の事であつて見れば、実際世話をしたのは女中であらう。
椙原品 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
見合せたがひに心中はいま江戸表八山に居る天一坊は多分たぶん此甚之助に相違あるまじくと思ひしが然あらぬていにて其方のせがれ甚之助はうまつき體面かほだち如何有しやと尋ぬるに甚左衞門私し悴は疱瘡はうさうおもく候故其あと面體めんていのこはなはみにくく候と云にさて人違ひとちがひならんと又問けるは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)