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疱瘡人
良人の御歸り
迄と御止め申たなれ
共以前世話になられし
家に
疱瘡人が是ある由にて是非
見舞に
行ねば成ぬにより
何れ又々近日御尋ね申さん
宜敷申
上呉よと云はれて御歸り成れしと云ふに文右衞門
然でありしか市之丞と
云ふ
男は
義心盛んにして誠に
奇特なる者なり昔し助けし恩を
入置其の
身は
素知ぬ
顏して女房に
暇乞なし歸らんとするに女房は
押止め市之丞樣
最早夫文右衞門も程なく
歸宅致事なれば先々御待下されよと申けれども長八は以前
世話に
預りし者の方に
疱瘡人是あるゆゑ夫へ是非々々尋ね
行ざればならず
何卒文右衞門樣御歸りあらば
宜敷仰せ上られ下されよ又々近日
御尋ね申上んと
言置長八は