画師えし)” の例文
旧字:畫師
(殊に「人生は地獄よりも地獄的である」と云う言葉だった)それから「地獄変」の主人公、——良秀よしひでと云う画師えしの運命だった。
歯車 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かく申込んだのは、この頃米沢に漫遊中の江戸の画師えし狩野かのうの流れは汲めども又別に一家を成そうと焦っている、立花直芳たちばななおよしという若者であった。
壁の眼の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
例の如く文人、画師えし、力士、俳優、幇間ほうかん芸妓げいぎ等の大一座で、酒たけなわなるころになった。その中に枳園、富穀、矢島優善やすよし、伊沢徳安とくあんなどが居合せた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
これでこの話はおしまいに致します。古い経文きょうもんの言葉に、心はたくみなる画師えしの如し、とございます。何となく思浮おもいうかめらるる言葉ではござりませぬか。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あたし、一生独立しようと心に誓って、はじめは、医者になろうかと思ったのですけれど、それもだめだったし、画師えしになろうかとも思ったのですけれど、それも駄目。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
しかれども予は予が画師えしたるを利器として、ともかくも口実を設けつつ、予と兄弟もただならざる医学士高峰をしいて、それの日東京府下のある病院において、かれとうを下すべき
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その横の壁にはチベットで最も上手な画師えしが描いた高尚ながあり、その正面にはチベット風の二畳の高台こうだい(法王の御座ぎょざ)があって、その横にまたチベットの厚い敷物がある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そして画師えし画枠えわくに向っている傍について墨をったり絵の具を溶かしたりした。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
破瓶われがめ画師えしうち抱き
如是 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
突然毒蛇を投げて人殺しを企てた三面の娘の心は、容易に旅画師えしには解けなかった。しかし段々問い詰めて見て、初めて分った。それは総べて三面谷に伝わる古くからの迷信から発したのであった。
壁の眼の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)