甲州こうしゅう)” の例文
「まアだまって、わっしについておいでなさい。どうせあなたがたは、甲州こうしゅう田舎者いなかもの、都のみちは、ごあんないじゃありますめえが」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とらの門、青山、明治神宮の上空を飛んで、世田谷区にはいり、それから、甲州こうしゅう街道ぞいに、八王子はちおうじ市の方向にむかったということでした。
宇宙怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「今しがた二俣ふたまた城へまいった物見(斥候せっこう)がかえり、二俣もついに落城、甲州こうしゅう勢はいっきにこの浜松はままつへおし寄せまいるとのことでござります」
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
主夫妻あるじふさいが東京に出ると屹度いて来る。甲州こうしゅう街道かいどうを新宿へ行くあいだには、大きな犬、強い犬、あらい犬、意地悪い犬が沢山居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかし自分が最近に中央線の鉄道を通過した機会に信州しんしゅう甲州こうしゅうの沿線における暴風被害を瞥見べっけんした結果気のついた一事は
天災と国防 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
昔四谷通は新宿より甲州こうしゅう街道また青梅おうめ街道となり、青山は大山おおやま街道、巣鴨は板橋を経て中仙道なかせんどうにつづく事江戸絵図を見るまでもなく人の知る所である。
ここは甲州こうしゅう笛吹川ふえふきがわの上流、東山梨ひがしやまなし釜和原かまわばらという村で、戸数こすうもいくらも無いさみしいところである。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「じつはこのひとは、甲州こうしゅう水晶掘すいしょうほりの女房で、おときといいますが、わけがあって自分のひとりのをたずねあるいておるんです」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甲州こうしゅう街道かいどうに獅子毛天狗顔をした意地悪い犬が居た。坊ちゃんの白を一方ひとかたならず妬み憎んで、顔さえ合わすと直ぐんだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
試みに中央線の汽車で甲州こうしゅうから信州しんしゅうへ分け入る際、沿道の民家の建築様式あるいは単にその屋根の形だけに注意してみても、私の言うことが何を意味するかがおぼろげにわかるであろうと思う。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
其帰りにあまり路がわるいので、矢張此洋服で甲州こうしゅう街道かいどうまで車の後押しをして行くと、小供が見つけてわい/\はやし立てた。よく笑わるゝ洋服である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「そのことばが、甲州こうしゅうなまりだから、甲州の田舎者といったのがどうした、甲州も甲州、二十七代もつづいた武田たけだ落人おちゅうど、四郎勝頼かつよりはてめえだろう!」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでにかの甲州こうしゅう方面では、信長、信忠の指揮下に、大軍甲信国境からながれこんで、ちょうどこの日、武田勝頼かつよりは運命の非を知って、その拠城新府しんぷにみずから火を放ち
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蛮船ばんせんから買い入れようときそっているが——この尾州びしゅうあたりはまだ地の利を得ておるものの——甲州こうしゅう越後えちご奥州おうしゅうあたりの山武士やまざむらいのうちには、鉄砲とはどんな物か、まだ見たこともない者が多かろう。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甲州こうしゅう
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)