生薑しょうが)” の例文
マカラム街の珈琲コーヒー店キャフェ・バンダラウェラは、雨期の赤土のような土耳古トルコ珈琲のほかに、ジャマイカ産の生薑しょうが水をも売っていた。
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
生薑しょうがをたくさん刻み込んで煮つけたのは通常どこでもやることだが、どこで食っても大概食えるものである。出雲の地方では、これに酒粕を入れて煮る。
田螺 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
生薑しょうがの刻んだもの二匁を材料とし、まず鍋に油をたぎらせ、鯰の肉を入れて時々箸で裏返し、約三十分間ほど強火で炒り、それから酒やその他の材料を入れて蓋をし
(新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
めっかち生薑しょうが千木箱ちぎばこで名代の芝神明しんめい、山の手唯一の湯島天神など、ちょっと息つぎの形。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
茶の時には蜜柑みかん五目飯ごもくめし生薑しょうがとが一座の眼をあざやかにした。帰りはいつも十一時を過ぎていた。さびしい士族屋敷の竹藪たけやぶの陰の道を若い男と女とは笑いさざめいて帰った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
お松が自分をおぶって、囲炉裏端へ上った時に母とお松の母は、生薑しょうがの赤漬と白砂糖で茶を飲んで居った。お松は「今夜坊さんはねえやの処へ泊ってください」と頻りに云ってる。
守の家 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そのとき、一人のせた若者が、生薑しょうがを噛みつつ木槵樹もくろじゅの下へ現れた。彼は破れた軽い麻鞋おぐつを、水に浸ったたわらのように重々しく運びながら、次第に草玉の茂みの方へ近か寄って来た。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
酒のさかなには、冷豆腐ひややっこ、薬味、生薑しょうが青紫蘇あおじそ。それに胡瓜きゅうりもみ、茄子なす新漬しんづけぐらいのところで、半蔵と寿平次とは涼しい風の来る店座敷の軒近いところに、めいめいぜんを控えた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
梅干や赤漬の生薑しょうがに砂糖をかけたお茶請ちゃうけか何かで、四辺かまわぬ高声で主客が話をしている傍で、恐らくポカンと口を開けたまま、一生懸命に聞いている鼻たらし小僧を想像して見て下さい。
登山談義 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
また無雑作に通りへテーブルを据えつけて、胡桃くるみだの、石鹸だの、石鹸そっくりの生薑しょうが餅だのを売っているところもあれば、丸々とふとった魚にフォークを突きさした絵看板を出した煮売にうり屋もあった。
生薑しょうが 五貫目
これらを奇異に吸収しながら、そのキャフェまえの歩道の一卓で生薑しょうが水とはえの卵を流しこんでいる日本人の旅行者夫妻、それから、すこし離れて
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
卑弥呼ひみこは竹皮を編んで敷きつめた酒宴の広間へ通された。松明たいまつの光に照された緑のかしわの葉の上には、山椒さんしょうの汁で洗われた山蛤やまがえると、山蟹やまがにと、生薑しょうがこい酸漿ほおずきと、まだ色づかぬ獮猴桃しらくちの実とが並んでいた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
多美児タミル族の女たちは昼は、暗い土間の奥から行人こうじんに笑いかけたり、生薑しょうが水をささげてテーブルへ接近したり、首飾りを手製するために外国貨幣をあつめたりした。
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)