生易なまやさ)” の例文
そのために十勝岳のような所では、零下十度以下の戸外で数時間もの連続観測をするのであるから、生易なまやさしいことではないのである。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
けれど、二三にちもたつともうそろそろむづむづしてくるのだから、この熱病ねつびやう生易なまやさしいことではなかなか全快ぜんくわいしさうにもない。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
彼女が、瑠璃子夫人であるか何うかは、手記を読んだ後も、判然とはわからなかった。が、たゞ生易なまやさしく平和のうちに、返すべき時計でないことはあきらかだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
負けず劣らず酷いのが、伊香保いかほを中心として榛名はるなをめぐって、前橋、高崎あたりを襲うやつ。この辺のは、ガラガラゴロゴロなぞという生易なまやさしい音ではない。
雷嫌いの話 (新字新仮名) / 橘外男(著)
それも、ったの張ったのという生易なまやさしいのではなくて、お目出度い元日に、組頭の首が一つれて飛んだのだから、大変なさわぎになったのは当然である。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いや何のそのような生易なまやさしいことが、と貞阿はわれとわが心をしかる。京の滅びなどの眼で見て来たことは、恐らくはこの度の大転変の現われの九牛きゅうぎゅうの一毛にしか過ぎまい。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
諸君! これは生易なまやさしい遊び事ではございません。一生の浮沈の別れ目です。生涯山賊の部下として、奴隷の境遇に終始するか、愛と自由と平等との人間界へ下りて行くか、その別れ目でございます。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その火焔山は昔孫悟空が天宮をさわがした時、老君の丹炉たんろ踏倒ふみたおし、それが地に降って出来たものである。それはなかなか活火山などという生易なまやさしいものではないらしい。
『西遊記』の夢 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
名ばかりの妻、これは瑠璃子るりこが最初考えていたように、生易なまやさしいことではなかった。彼女は、自分のみさおを守るために、あらゆる手段と謀計とをめぐらさねばならなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
いや何のそのやうな生易なまやさしいことが、と貞阿はわれとわが心をしかる。京の滅びなどの眼で見て来たことは、恐らくはこの度の大転変の現はれの九牛きゅうぎゅうの一毛にしか過ぎまい。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
そんな生易なまやさしい場面ではないのだから、お絃の顔つきもいささか緊張している。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
まして潜水状態で、前に言ったような極度に精密を要する測定をするのは生易なまやさしいことではない。それでこの方法で世界中の七つの海をくまなく探るという案は先ず実行不可能である。
地球の円い話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
あれは生易なまやさしいことで救える男ではない。政治なんぞで成仏じょうぶつできる男ではない。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
あれは生易なまやさしいことで救へる男ではない。政治なんぞで成仏じょうぶつできる男ではない。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
アメリカのことであるから、何百人の科学者を動員し、何千万円という研究費を使っているのかもしれないが、それにしても今度の戦争にすぐ間に合うというような生易なまやさしい仕事ではないはずである。
原子爆弾雑話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)