生国しょうごく)” の例文
旧字:生國
その秋生国しょうごく遠州えんしゅう浜松在に隠遁いんとんして、半士半農の生活を送ることとなったが、その翌年の正月になって主家しゅか改易かいえきになってしまった。
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
甲州は四方しほう山の国、思いにつけぬ人が隠れているそうじゃ。そんなことはどうでもよいが、甲州といえば、わしが生国しょうごくはその隣り。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
地方人らしい見物の人人がその生国しょうごくをかいたり、年号を記したりしてあるのがあった。なかには北海道とか日向国などがあった。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
だが、金のほかに死者から預かっている「中条流印可目録」の巻物のうちにある佐々木小次郎とは、一体どこが生国しょうごくだろうか。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくし生国しょうごく近江おうみのくに長浜在ながはまざいでござりまして、たんじょう誕生は天文にじゅう一ねん、みずのえねのとしでござりますから、当年は幾つになりまするやら。
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
津木つきピンすけ福地ふくちキシャゴがいるから、頼んでからかわしてやろう」吾輩は金田君の生国しょうごくは分らんが
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして、美作屋では、自分の生国しょうごくから取ったものだけに、気がしたのか、あらためて小豆屋あずきや善兵衛と名告って、扇子やびんつけの荷を背負しょいながら、日々吉良邸の内外をうかがった。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
誤った人そのものはまだしもかれ親戚しんせき友人家屋かおく生国しょうごくまでも憎みやすいものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しかし彼等自身においては多くの場合、生国しょうごくを忘れるようなことはなかった。
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
またその生国しょうごくとしてこの地の名をも挙るものなれとて、いよいよ珍重して教えられ、人に逢えばその事を吹聴さるるに予も嬉しき事に思い、ますます学問に身を入れしゆえ、九歳の時に神童と言われ
良夜 (新字新仮名) / 饗庭篁村(著)
一昨夜の六名にしてみても、武蔵の生国しょうごくが、自分らと同じ作州であるというだけでも、藩へも世間へも、顔向けがならない気がするのだった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
手前、生国しょうごくと申しまするは、出羽は庄内、酒井左衛門尉の城下十四万石、伊豆屋甚兵衛の娘お柳と発しまして……
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
延喜十八年の晩春の一日あるひ。相馬の小次郎は、生国しょうごくの下総から、五十余日を費やして、やっと、京都のすぐてまえの、逢坂山おうさかやままで、たどりついた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よく当りました、八王子でござります。して、わしの生国しょうごくまで見抜きなさるお前さんは——」
牛若が、そうですと答えると、生国しょうごくはどこ、父の名は何、また何のために、この社で加冠したいかなどといろいろ訊く。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生国しょうごくから言えば同じ武蔵、拙者は近藤派によしみが深い、しかし、芹沢には義理がある」
役所へ曳いて参るまでは、至って神妙でござりましたが、取調べにかかると、頑として、姓名も生国しょうごくもいわず、ただ当所の奉行ぶぎょう森殿に会えば申そう。怪しい者ではない。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生国しょうごくと姓名を名乗らっしゃい」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「名まえかい。——名をいうほどな人間でもないが、これでも、先祖は伊豆の一族。今では浪人をしているので、生国しょうごくの名をとって、天城あまぎの四郎とよんでいる田舎いなか武士だよ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生国しょうごくは」
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)