あめ)” の例文
そうなってはもう啖呵たんかも出まい。きっと、俺のこの強い力にほだされて、いつの間にか俺のこの胸へ抱きこまれてくるんだろう。あめえものだ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの晩も腹立ちまぎれに隠宅を飛び出したが、お弓の泣いているのが気になって、隣の空家に入って、そっと様子を見ていたというからあめえもんでしょう」
日本の警察だってあめえもんじゃねえか。聞いてた程がものはねえや。サヤマだってそうだ。世界一の名探偵が聞いて呆れるよ。なあにり三万円が欲しくなったのよ。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「こないだね、親方が例の処へ行って朝遅く帰って来たもんだから、お主婦かみさんに小言を喰って喧嘩をおっぱじめたんだ。だが後でお主婦さんにあやまっていたよ。あめえんだな。」
少年の死 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
食物を作らなけりゃ、人間がきていられねえ。その生命の元を作るのは誰だ——と来る。この理窟にゃ誰だってかなわねえ、武者修行なんざああめえもんだ、おれは今日から百姓になる!
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
此間こねえだ他処よそから法事の饅頭が来た時、お店へも出ると彼奴は酒呑だからあめえ物は嫌えだろう、それだのにさ、清助われがに饅頭をくれてやる、田舎者だから此様こんな結構な物は食ったことは有るめえ
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ああ、いい酒だ、サルチルサンであめびんづめとは訳が違う。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「やあ本当だ、あめえ砂糖だ」
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「手槍がありゃ投ってお目にかけますぜ、猪や熊だって一と突きだ、人間なんざあめえもんで」
しかしおれがもろいのは人情を対手あいてとする時で、女にあめえと受け取られちゃあ少し困る。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お前たちの踊りなんぞはあめえもので、からっきし、物になっちゃあいねえ
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
江戸なア菓子はえらくあめえって悦ぶだア
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「主人の遠縁で、大きな面をしたい野郎だが、人間はあめえという話で」
「なあに、こんなあめえんじゃいけねえ」
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「まだあめえか、これでもか!」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「若い女にあめえのはあつしで」
「山陽なんぞはあめえものさ」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)