片陰かたかげ)” の例文
溝端みぞばた片陰かたかげに、封袋ふうたいを切って晃乎きらりとする、薬のすずひねくって、伏目に辰吉のたたずんだ容子ようすは、片頬かたほ微笑ほほえみさえ見える。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おびははやりの呉絽ごろであろう。ッかけに、きりりとむすんだ立姿たちすがた滝縞たきじま浴衣ゆかたが、いっそ背丈せたけをすっきりせて、さっすだれ片陰かたかげから縁先えんさきた十八むすめ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
母はれて無理にも起きようとしますが、日盛りに出て行って、また途中で倒れでもしては大変ですから、いろいろになだめて片陰かたかげの出来るまで寝かして置きまして
蜘蛛の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかもそのくせ、卑怯ひきょうにも片陰かたかげを拾い拾い小さなやしろ境内けいだいだの、心当こころあたりの、やしきの垣根をのぞいたが、前年の生垣も煉瓦にかわったのが多い。——清水谷しみずだにの奥まで掃除が届く。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)