烏羽玉ぬばたま)” の例文
鼻のあたり薄痘痕うすいもありて、口を引窄ひきすぼむる癖あり。歯性悪ければとて常にくろめたるが、かかるをや烏羽玉ぬばたまともふべくほとん耀かがやくばかりにうるはし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
烏羽玉ぬばたまの夜のみそかごと悲しむとひそかにひきも啼けるならじか
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ましてや他人たにんそこふかき計略けいりやくふちるべきならねばおとしいれられてのち一悔恨ひとくわいこんむなしくなみだくてりかゝる憂苦いうくつながるゝ情緒じやうちよ思慮しりよ分別ぶんべつ烏羽玉ぬばたまやみくらきなかにも星明ほしあかりに見合みあはせて莞爾につことばかり名殘なごり笑顏ゑがほうらさびしくいざとうながせばいざとこたへて流石さすがにたゆたは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
烏羽玉ぬばたまの暗き夜ふけに空高く凧ひとつあげてゐる人のあり
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
人知れず忍ぶ心は烏羽玉ぬばたまの黒き夜のごとかがやきいでぬ
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
烏羽玉ぬばたまの闇の粟穂の奥ふかくするどき猫のうぶ声きこゆ
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
烏羽玉ぬばたまの天竺牡丹咲きにけり男手に取り涙を流す
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)