為遂しと)” の例文
旧字:爲遂
そして彼には、この刹那せつなを境にして自分が、この地上で自ら為遂しとげなければならぬ事の何かを、完全に悟ったような気がしていた。
それから一年に近い間、この小さい為事はなめらか為遂しとげられて来たのだが、今日はすず子に堪へられない悪感を与へるのであつた。
計画 (新字旧仮名) / 平出修(著)
そこで君に注意して貰ひたいのは、そんな冒険な事を旨く為遂しとげるには、そいつが非常な軽捷な奴でなくてはならぬと云ふ点だ。
それと同時に草原を物狂わしく走っていた間感じていた、うまく復讐を為遂しとげたと云う喜も、次第につまらぬものになって来た。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
即ち何事に依らず完全に為遂しとげて、衆人の賞讃と驚歎とを博せようとするのである。例之たとへば学科は人に褒められ、模範とせられるまで勉強する。
然しそれ程の覚束おぼつかない事が、一方から見れば、是非共為遂しとげなくてはならぬ事である。そこで一行は先ず高崎と云う俵をほどいて見ることにした。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「しかし客人、死をおしむ者は殺さぬが又おきてだ、あらかじめ聞かう、ぬしある者と恋を為遂しとげるため、死を覚悟か。」
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
親御おやごさんが、その体では見込がないから廃嫡する、といわれた時、どうか少し待って下さい、必ず何か為遂しとげますから、と泣いてお頼みになり、江戸へ出て国学を専攷せんこうして
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
夜陰に乗じて事を為遂しとげるのは、元よりこんな場合の法則だが、その夜も来ない夕刻から、番所の前の往来は、一のさくも二の柵も閉まって、すわといえば鳴子が鳴りそうだ。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老人も昔脱獄を為遂しとげた時の事を思ひ出して、夕方になつて、自分は床の上に寝てゐながら、ワシリに島の地理を話し、逃げ出す時、どの道を逃げなくてはなるまいといふやうな事を言つた。
おまへは決心をしてそれを為遂しとげることの六ヶしいほうには違ひありません。それがためにおまへもいかい苦労をおしだ、わたしもなか/\はたで気がめ升。しかしまたちひさいにしては感心なところ有升あります
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
反響が、手早く為遂しとげた事実になって、素直には8830
息張って為遂しとげた目的から退いて行く。
為遂しとげりや四枚肩まいがた
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)