濶歩くわつぽ)” の例文
かれ其時そのとき服裝なりにも、動作どうさにも、思想しさうにも、こと/″\當世たうせいらしい才人さいじん面影おもかげみなぎらして、たかくび世間せけんもたげつゝ、かうとおもあたりを濶歩くわつぽした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これに渦毛うづけぶち艷々つや/\しきちんつないで、ぐい/\と手綱たづなのやうにさばいてしが、ふとこゑして、うぢや歩行あるくか、とふ/\ひとげにさつさつと縱横じうわう濶歩くわつぽする。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
只、金を通して、金の周圍に、すばらしい、同時にえたいの知れない不可思議な力を持つたからくり人形が、どし/\と跫音あしおと高く濶歩くわつぽしてゐるのを感ずるだけであつた。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
東清とうしん鉄道あたりの従業員は、日本人と露西亜ロシア人とで冬になるとことにエネルギイの差が目立つといふことをきいてゐるが、今頃の鎌倉を濶歩くわつぽしてゐる西洋人を見るとさうだらうと思ふ。
一番気乗のする時 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)