激甚げきじん)” の例文
今日の如く日々にちにち外国思潮の襲来激甚げきじんなる時代においてかくの如き自由解放の態度はむしろ全体の破壊を招かんのみ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
歌集『涌井わくい』は動乱のさなかに作られた歌の集である。戦争の最後の年、空襲がようやく激甚げきじんとなってくるころに、先生は、病を押して災禍を信州に避けられた。
歌集『涌井』を読む (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
あの洋裁学院の附近が最も被害激甚げきじんであって、妙子が無事であるかどうかすこぶ心許こころもとないこと、憂慮のあまり夫に頼んで、兎も角も行ける所まで行って見て貰うことになり
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
勘次かんじとなくとなく田畑たはたあるいて只管ひたすらこゝろなやましたが、やうや自分じぶん田畑たはた作物さくもつわづか損害そんがいをはつたことをたしかめたときかれ激甚げきじん被害地ひがいち状况じやうきやう傳聞でんぶんして自分じぶんむしさいはひであつたことをひそかよろこんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ことにアンゴラの首府ロアンダの北方サンサルバドルよりコンゴーのマタディ港へ通ずるコンゴー盆地条約による自由地帯付近は密輸のもっとも激甚げきじんなるところとして注目をいているのであったが
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
その激甚げきじん繁雑はんざつ
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
新聞で見ても、住吉川と蘆屋川の沿岸が最も被害激甚げきじんであることは明かであったが、甲南小学校の生徒の死んだことなどが載っているのを読んだ雪子は、何よりも悦子の安否を知りたかった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)