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澱
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おど
ふりがな文庫
“
澱
(
おど
)” の例文
むしろの上のあちこちに
澱
(
おど
)
んでいた男やら女やらの影は、急にワラをもつかみたい目つきになって、彼のことばに耳を
研
(
と
)
いでいた。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
海岸からはだいぶ
道程
(
みちのり
)
のある山手だけれども水は存外悪かった。
手拭
(
てぬぐい
)
を
絞
(
しぼ
)
って
金盥
(
かなだらい
)
の底を見ていると、たちまち砂のような
滓
(
おり
)
が
澱
(
おど
)
んだ。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
雨がはれあがって、しめっぽい六月の空の下に、高原地の古い町が、
澱
(
おど
)
んだような静さと寂しさとで、彼女の
曇
(
うる
)
んだ目に映った。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
外の波濤は穂がしら白く、内のとろみは乳黄で、またやや光った銅色で、閑かなようでもどうにもならない
澱
(
おど
)
みがある。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
蠣殻町から汚い水の
澱
(
おど
)
んだ堀割を新材木町の方へ渡ってゆくと、短い冬の日はもう高い
棟
(
むね
)
の
彼方
(
かなた
)
に姿を隠して
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
▼ もっと見る
不思議に思って中を
覗
(
のぞ
)
くと、香の色をした液体が半分ばかり
澱
(
おど
)
んでいる底の方に、親指ぐらいの太さの二三寸の長さの黒っぽい黄色い固形物が、三きれほど
圓
(
まる
)
くかたまっていた。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それまではたれにも
澱
(
おど
)
んでいた
一抹
(
いちまつ
)
の
危惧
(
きぐ
)
だったものも、
恩怨
(
おんえん
)
すべて、尊氏のことばで、すかっと、
一掃
(
いっそう
)
された感だった。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
机の上には来た時のままの紙や本が散らばっていて、
澱
(
おど
)
んだような電気の明りに、夏虫が羽音を立てていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
屋根の
太陽
(
ひ
)
は赤く
澱
(
おど
)
みて石だたみ古るき
歩道
(
ほだう
)
に暮れ落ちにけり
雲母集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
甲冑
(
かっちゅう
)
を白い
衫衣
(
すずし
)
に脱ぎかえ、蚊やり香の糸に
閑
(
しずか
)
な身を巻かれてみると、あだかも血の酔いから醒めたような、むなしいものだけが心に
澱
(
おど
)
んでくるのだった。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いいんだよ。」と、芳太郎は耳に挟んでいた両切りの莨に火を
点
(
つ
)
けて吸いながら、お庄の傍を離れなかった。帽子も
冠
(
かぶ
)
らない顔が蒼白く、目の色も
澱
(
おど
)
んでいる。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
澱
(
おど
)
み
饐
(
す
)
えつつ……血のごともらんぷは消ゆる。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
じっと部屋に坐っていると、お今は時々
澱
(
おど
)
んだ
頭脳
(
あたま
)
が狂いそうに感ぜられた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
腐
(
くさ
)
れたる
酒類
(
さけるゐ
)
の
澱
(
おど
)
み
濁
(
にご
)
りて
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
澱
漢検準1級
部首:⽔
16画
“澱”を含む語句
沈澱
澱粉
澱粉質
沈澱物
夕澱
澱河歌
沈澱党
沈澱組
澱川
澱滓
澱粉粒