滞留たいりゅう)” の例文
旧字:滯留
また、武田たけだの若君ともあるおんかたが、拙者せっしゃやかたへおいでくださったのは天のおひきあわせ。なにとぞ幾年でもご滞留たいりゅうをねがいまする。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
親方はわたしに、ここがツールーズの町だと言って、しばらくここに滞留たいりゅうするはずだと話した。
文展ぶんてんで評判の好かった不折ふせつの「陶器つくり」の油絵、三千里の行脚あんぎゃして此処にも滞留たいりゅうした碧梧桐「花林檎」の額、子規、碧、虚の短冊、与謝野夫妻、竹柏園社中の短冊など見た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
僕が前年フランスに滞留たいりゅうして、教師をやといフランス語を練習していたころ、農政に関するスペインの書を入手し、これを読もうとしたが、僕はスペイン語に不案内であったから、くだんの教師に
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
久しく滞留たいりゅう折柄おりから、日本の軍艦がサンフランシスコに航海と聞き、幸便こうびんだからこれのって帰国したいと云うので、その事がまろうとすると、日本の乗組員は米国人と一緒に乗るのはいやだと云う。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
合法的ごうほうてき滞留たいりゅう
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「このあいだから、お客さまがご滞留たいりゅうなので、このごろは、ずっと荘園そうえんにおいでなさいます」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一つの町に五、六日もつづけて滞留たいりゅういているようなときには、カピがついていさえすれば、親方はわたしを一人手放して外へ出してくれた。親方はつまりわたしをカピにあずけたのである。
大正たいしょう元年がんねんの夏のころ、僕は米国に滞留たいりゅうしていたが、そのころ日本の新聞通信にもあらわれたことで、シカゴ市における共和党きょうわとうの大会は近年にない大騒ぎで、独り米国の一大出来事できごとたるのみならず
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
九月九日から十二日まで、奥州おうしゅう浅虫あさむし温泉滞留たいりゅう
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その公書こうしょ浜松はままつからもたらしてきたお小姓こしょうとんぼぐみ星川余一ほしかわよいちは、万千代まんちよさまへのもうしわけに、わし行方ゆくえをつきめるまで、しばらく長安ながやす詮議せんぎをたよりに、ここへ滞留たいりゅうしていることになる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「大殿のご容子までは、まだうかがい上げておりませぬ。……何せい、それとらせてくれた者がありましたので、聞くやいな、われら両人にてすぐに毛利家の使者が滞留たいりゅうしている城外の寺院へ駆けて行きましたので」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お蔭様で大阪にも、ゆっくり滞留たいりゅういたしました」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)