溝渠こうきよ)” の例文
火を溝渠こうきよの中に焚きて食を調とゝのへたり。手に小鼓タムブリノりて、我等を要して卜筮ぼくぜいせんとしつれど、馭者は馬にむちうちて進み行きぬ。
第四は本所深川日本橋京橋きやうばし下谷浅草あさくさとう市中繁華の町に通ずる純然たる運河、第五は芝の桜川さくらがは、根津の藍染川あゐそめがは、麻布の古川ふるかは、下谷の忍川しのぶがはの如き其の名のみ美しき溝渠こうきよ、もしくは下水げすゐ
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しかかれつてるのは幾屈曲いくくつきよくをなして當時たうじである。かれ何時いつにか極端きよくたん人工的じんこうてき整理せいりほどこされた耕地かうち驚愕おどろきみはつた。かれ溝渠こうきよ井然せいぜんとしてるのに見惚みとれてしまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さらせる布の如き溝渠こうきよ、緑なるかもの如き草原の上なる薄ぎぬは、次第にかゝげ去られたり。時はまだ二月末なれど、日はやゝ暑しと覺ゆる程に照りかゞやきぬ。水牛は高草の間に群れり。
すべ溝渠こうきよ運河の眺望の最も変化に富みつ活気を帯びる処は、この中洲なかずの水のやうに彼方かなた此方こなたから幾筋いくすぢの細い流れがやゝ広い堀割を中心にして一個所に落合つて来る処、しくは深川の扇橋あふぎばしの如く
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)